電子講義:入門量子情報

全卓樹

[電子講義集] [全HP]
[Index] [0] [5] [10] [15] [20] [25] [30]
前へ 次へ

猫でもわかる量子情報(16)

2つの量子矢印のベル基底

当面の仕上げとして「テレポーテーション」とセンセーショナルに呼ばれている現象をみましょう。まず前置きです。前節で、矢印1と2からなる系の状態 |A> 、|B> が出てきましたが、これ以外に2つ状態を加えて
 |A> = |↑>1|↓>2|B> = |↓>1|↑>2、|C> = |↑>1|↑>2|D> = |↓>1|↓>2
を考えると、この4つであきらかに両方の矢印の上下の可能性を尽くしてますから、これは2矢印状態の基底セットになります。別なチョイスとして、もつれ状態だけからなる次のような基底セットもあります。

      |X+> = 1/√2|↑>1|↓>2 + 1/√2|↓>1|↑>2
      |X- > = 1/√2|↑>1|↓>2 - 1/√2|↓>1|↑>2
      |Y+> = 1/√2|↑>1|↑>2 + 1/√2|↓>1|↓>2
      |Y- > = 1/√2|↑>1|↑>2 - 1/√2|↓>1|↓>2

この4つの状態の組が基底セットな事は、自分自身との内積は全て1、異なったもの同士の内積は全て0であって、それぞれが互いを含まない別な状態であることから判ります。これを「ベル基底」といいます。ここの|X+>はさっき出てきた|S>と同じものです。基底だと言うからには、これ等のもつれている状態は作ることができ、かつ観測にかかるはずです。

3つの矢印の量子状態

さてアリスが量子矢印Aをθ傾いた状態に設置したとしましょう。

      |θ>A = cos[θ/2] |↑>A + sin[θ/2] |↓>A

このままの形で遠くにいるボブに伝えたいとします。今回はイヴと仲直りして、彼女に手伝ってもらいます。イヴはアリスとは別の2つの矢印EとBで

      |Φ>EB = 1/√2 |↑>E|↓>B - 1/√2 |↓>E|↑>B

というもつれ状態を作っておいて、矢印Eをアリスに、矢印Bをボブに送りつけます。3つの矢印の状態全体の状態を |Ψ>AEB とかくと、それは

      |Ψ>AEB = |θ>A |Φ>EB

です。

行先: 研究のページ
copyright 2004
全卓樹ホーム 教育のページ
t.cheon & associates