2つの量子矢印のベル基底
当面の仕上げとして「テレポーテーション」とセンセーショナルに呼ばれている現象をみましょう。まず前置きです。前節で、矢印1と2からなる系の状態 |A> 、|B> が出てきましたが、これ以外に2つ状態を加えて
|A> = |↑>1|↓>2、|B> = |↓>1|↑>2、|C> = |↑>1|↑>2、|D> = |↓>1|↓>2
を考えると、この4つであきらかに両方の矢印の上下の可能性を尽くしてますから、これは2矢印状態の基底セットになります。別なチョイスとして、もつれ状態だけからなる次のような基底セットもあります。
|X+> = 1/√2|↑>1|↓>2 + 1/√2|↓>1|↑>2、 |X- > = 1/√2|↑>1|↓>2 - 1/√2|↓>1|↑>2、
|Y+> = 1/√2|↑>1|↑>2 + 1/√2|↓>1|↓>2、 |Y- > = 1/√2|↑>1|↑>2 - 1/√2|↓>1|↓>2
この4つの状態の組が基底セットな事は、自分自身との内積は全て1、異なったもの同士の内積は全て0であって、それぞれが互いを含まない別な状態であることから判ります。これを「ベル基底」といいます。ここの|X+>はさっき出てきた|S>と同じものです。基底だと言うからには、これ等のもつれている状態は作ることができ、かつ観測にかかるはずです。
3つの矢印の量子状態
さてアリスが量子矢印Aをθ傾いた状態に設置したとしましょう。
|θ>A = cos[θ/2] |↑>A + sin[θ/2] |↓>A
このままの形で遠くにいるボブに伝えたいとします。今回はイヴと仲直りして、彼女に手伝ってもらいます。イヴはアリスとは別の2つの矢印EとBで
|Φ>EB = 1/√2 |↑>E|↓>B - 1/√2 |↓>E|↑>B
というもつれ状態を作っておいて、矢印Eをアリスに、矢印Bをボブに送りつけます。3つの矢印の状態全体の状態を |Ψ>AEB とかくと、それは
|Ψ>AEB = |θ>A |Φ>EB
です。
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