電子講義:入門量子情報

全卓樹

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猫でもわかる量子情報(28)

量子計算の射程

 通常の教科書だと、このあとに量子フーリエ変換の事がのってて、つぎにショアの量子因数分解アルゴリズムが説明されます。でもこれ以上は猫には理解が大変なので、ここでは扱わない事にします。(気が変わって数ヶ月後にはアップされてる可能性もあります。)グローヴァーの量子検索のアルゴリスムについては追って掲載するつもりです。

そこでさしあたりは、もうこれで技術的な説明はやめて、あとはお話を読んでいきます。

コンピューターの計算速度が技術革新で年々早くなる様は「ムーアの法則」としてよく知られている通りです。なんでも3年で10倍と言いますよね。これはコンピューターを構成するチップをより早く駆動できるようになってくる、という側面と、チップ自体ががどんどん微小になっていくとう面の両方があります。クロック数に関してはGHzでそろそろ限界が近くなっています。
一方微小化ですが、いまや配線の太さは100nmを切り始めました。これはまさに量子論の領域の門口にそろそろ足を踏み入れる段階といっていいでしょう。通常のコンピューターのチップは巨視的な量の電子を流して、その電流で0とか1を表していますが、発熱も馬鹿になりませんし、配線が微小になると漏電を防ぐためにも流す電流も微小にしていきます。ムーアの法則を守るってあと30年も続けるには、10nmくらいの配線にして電子の数を数万個、数千個、数百個、と減らしていくわけですが、その行き着く先にあるものは、必然的に量子計算機以外にはあり得ないと考えられる訳です。

つまり30年あるいは50年先を見ると、量子計算機をナノスケールのチップに実装していかない限り、半導体産業の発展は壁にぶち当たる可能性が非常に高いのです。

ところが一方、そのような量子計算機が出来た暁には、「ムーアの法則」を突き破るような超並列計算が可能になる訳なのです。そうであればこそ、量子並列計算アルゴリスムのレパートリーを拡げておくのは、理論的興味はもちろんですが、実用的な意味でも非常に重要だと納得できるのではないでしょうか。
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