猫でもわかる量子情報（１３）

量子暗号BB84の実際その２：イヴもお手上げ

BB84のリダンダンシーとE91、B92、　そして量子的ローマ帝国

これをみると、なんかどこかまだるっこしい感じがしませんか？量子暗号通信には乱数列がどうしても３組もいるんだろうか？もっと効率化できるんじゃないか？これにたいして答えたのが１９９２年のべネットで、彼が考えたBB84の改良型のプロトコルがB９２と言われるものです。またこれより少し先にポーランドのエカートが、後で出てくる「もつれた２矢印の状態」というものを用いた乱数列共有法を考えていて、こちらの方はE91と呼ばれます。その後BB84とE91は数学的に等価であることが示され、今のところB92がもっとも効率的な量子暗号と思われています。B92ではボブが「量子状態フィルター」という超ハイテク装置を持ってるとします。そしてコーディング法が少し風変わりで、ビット０を上下コーディングで上向き、ビット０を左右コーディングで左向き、という風に２つを取り混ぜて使います。つまりアリスはモードを決めるサイコロを振らなくて良いので楽です。サイコロを振るのはときに重大な結果をもたらすのは歴史的に良く知られているとおりで、カエサルが「サイコロは振られた」といってルビコン川をわたってローマに新時代を画したのは有名ですね。カエサルの振ったサイコロが量子サイコロだったとしたらどうでしょう？古代西洋世界は「一つのローマ帝国」と「カエサルのガリア帝国とポンペイウスのローマ共和国」の重ね合わせ状態だったんでしょうか。