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地域実装工学研究室
2019年に地域連携機構(旧地域イノベーション共創機構)をユニット制に改組したのを機に、古澤が、それまでの研究資産を継承しつつ新たに地域実装工学研究室を立ち上げました。当研究室は、地域連携機構15年の経験を基に、地域の特性を踏まえた大学の「知」の活用方法、すなわち社会実装のプロセスを抽出し、工学的な体系として確立することを目指しています。(信田・西原・桂2022;2023;2024)
地域実装工学は、地域社会のニーズを深く理解し、その特性を踏まえた上で、科学技術の成果を社会に実装するための方法論を研究する新しい学問分野です。これまでの経験から様々な論点を抽出し、地域実装工学を理論化する基盤として活かします。従来の工学が対象としてきた産業分野だけでなく、地域を中央に対する周縁という抽象ではなく、人が生業・生活を営む場としての実在であると捉え、地域社会全体の持続可能な発展法則を工学的に導こうとしている点に特徴があります。
本研究室の設立には、高知工科大学の歴史が深く関わっています。開学当初、大学は地域産業の振興を目指し、産学官連携を積極的に推進しました。しかし、大学の先端技術を地域産業に十分に活用するには至りませんでした。数々のプロジェクトの失敗と成功の経験から、社会実装は制度設計者が空想するほど単純ではないこと、実装プロセスそのものが大学未踏の大きな研究課題であることを学びました。2009年に設立された地域連携機構での15年以上の現場実践型プロジェクトの経験は、大学にとって実装とは何かを論じるに足るデータを提供しています。
このような本学が経験してきた地域実装の履歴は、社会実装という側面からの事例分析の素材となります。少なくとも、「実装=ハイリスク案件のプロトタイピング」という観点からは、一定の成果を上げていると言えます。実装の局面では大学側の「知の成果」を地域側の運用主体に「引き渡す」ことが鍵となることも明らかになりました。そして、成功事例はいずれも新規開発のハイテクではなく、流通している技術の「組み合わせ」によるものであることも見えてきました。
以上の知見を、実践で活かし有効性を実証することも、地域実装工学研究室の重要なミッションと考えています。
- 研究室長からのメッセージ
- 近年のデータ経済の急成長・AIサービスのコモディティ化は、森羅万象の情報を「計算機内データ」として活用することで、社会変革が促されることを示しています。この実現には、計算機内データを、新しい情報媒体として現場での実践を通じて再び「脳内データ」に昇華させる方法論の構築が必要です。特には、第2幕のデータ・AI経済においては、個人消費市場と連動した第1幕と異なり、地域に眠る未回収データの価値化が期待されていますが、具体的な利活用法はまだ定まっていません。このような時代状況にあって,地域実装工学研究室は、地域を中央の周縁としてではなく、そこに住む人々の生業や生活の場として捉え、持続可能な発展法則を工学的に導くことを目指しています。地域社会のニーズを深く理解し、必ずしも新技術の開発にこだわることなく、既存技術の組み合わせによる知の成果を地域へ引き渡すことで、本質的な成果に繋げて参りたいと考えております。