ものづくり先端技術研究室

 研究室の取り組みの一つとして、地域資源を活用し、付加価値の向上を目指した新商品の研究開発に取り組んできました。具体的な成果としましては、室戸市にて製塩を営まれている企業と共同研究を行い、天日塩と同品質の食塩を工業的に生産するシステムの開発、および副産物として得られるミネラル液を飲料水メーカーが要望する成分組成に調整する生成法の解明を行いました。両者とも商品化にまで至り、食塩につきましては、食品メーカーに納入されるほか、スーパーマーケットで一般消費者向けに販売されています。また、ミネラル液につきましても実用化されてから15年が経過していますが、今でも大手メーカーの清涼飲料水の原液としてロングセラー商品に採用されています。

 一方、生鮮魚介類の鮮度保持に有効なスラリーアイス生成装置の開発につきましては、急速冷却が可能でありながら、魚介類が凍結しない最も低温の液状氷を生産する装置が完成し、共同研究企業の方で事業展開が進められています。

 研究室ではこの技術の新たな展開として、液状食品の品質を低下させることなく濃縮が行える凍結濃縮システムの研究にも取り組んでいます。この濃縮法は、果汁や出汁などの液状食品を冷却し、純水の氷粒子を内部に生成します。そして、氷粒子を取り除くことで濃縮液を得ることができます。常に冷却しながらの濃縮となりますので、熱により変質してしまう成分や揮発してしまう成分に影響を及ぼさずに操作が行えます。

 また、飲用可能なスラリーアイス生成法の確立を目指しています。地球温暖化が進む中で、スポーツや防災の業界にて体内冷却が注目されています。このニーズに応えるため、経口補水液といった希釈水溶液からスラリーアイスの生成が可能であり、スラリーアイス内の氷粒子が一様に分布することを目標に研究を進めています。

 このように、研究室では主に実用化・事業化を念頭においた研究開発を行っており、ニーズに対して商品・施策を具現化するという方針で活動しています。

研究室長からのメッセージ
産業界では業務改善に加えて、新たな商品を生み出すことにより企業価値を高めていくという責務に日々駆られているのではないでしょうか。そのような状況の中でイノベーションを創出するには、ニーズの体系化に加え、各組織に潜在する課題や能力を深部にわたり見つめ直すことで形式知化した後、実装に向けたコンセプト形成に進まなければいけません。本研究室では、このような初期段階においても産学官連携を図り、ものづくりを通して社会ニーズに適応した新たな創出を協働していきたいと考えています。また、今後の労働供給制約の加速に伴い、これからの組織人はナレッジワーカーとした活動がより一層求められます。そこで、共同研究に携わる技術者と共に学び、技術の研鑽を積むことで思考力・観察力の向上を図り、様々な取り組みに適応可能な人材の成長に寄与できる研究活動を進めています。
まずはお気軽にお声がけ下さいましたら幸いです。