地域自然共生研究室

 高知は自然が豊かな地域です。南に黒潮が流れる太平洋をのぞみ、北には剣山や石鎚山を含む四国山地が広がります。この両者を四万十川や仁淀川に代表される清流が結びます。地域自然というとき、それは手付かずの自然ではなく、人々が影響をうけつつ、それと同時に適切な介入を加えるような自然、人とともにある自然です。里山や里地は、そんな人とともにあった地域自然を最もよくあらわす言葉です。しかし、第二次世界大戦後の高度経済成長期から、人々の多くは都市へと移動し、一方で里山のある領域(中山間地)の多くは過疎を経て限界集落になり、場合によっては消滅集落にまで移行しつつあります。その過程で中山間地が手付かずになってしまい、放置林や耕作放棄地がどんどん増えて行く状況が進んでいます。人の働きかけが減るなか、土壌の保水力も低下し土砂災害などが誘発されることもあります。また地球温暖化の影響で集中豪雨や想定できない自然災害が、これまでには発生していない地域を襲うこともあります。その一方で新型コロナ禍を契機として都市一極集中の過密居住に対する不安や疑念が生起して、里山や里地といった地域自然のなかでの暮らしを求めて高知への移住を希望する人々が増えてもいます。このように現在の高知における地域自然は、働きかけの減少と地球環境の悪化に起因する問題を抱えると同時に、近自然の暮らしへと回帰できる豊かな場所としての可能性を有しています。

 地域自然共生研究室では、1.地球温暖化等による環境変容のなかにある地域の自然現象を計測し、そのメカニズムを解明します。2.自然現象の把握にもとづき、その問題を解消し、自然をよりよく活かしうる場、すなわち、地域自然と共生できる場のあり方を地域自然共生デザインとして提示します。大きく変化してしまった地域自然の実相を知り、それにもとづいてふたたび人々が自然とともに生きられる場にしていく有効な手がかりを示していきたいと考えています。

研究室長からのメッセージ
地域自然共生研究室は、自然現象のメカニズムを解明するサイエンスの分野と、地域の空間読解にもとづいて空間設計をおこなう環境建築デザイン分野とのユニークなコラボ研究室です。高知は自然豊かな地域ですが、現在は、かつてのような人間と自然が適切に相互作用しながら暮らしていく「地域自然共生」のあり方は崩れてしまっています。さらに地球温暖化に代表される環境悪化が重なります。この問題に対応するには自然現象を解明し、その知見にもとづいて自然共生デザインの道筋を示す必要があります。研究室構成員は机上にいるだけでなく地域自然にはいりこみます。その上でサイエンスとデザインをコラボして21世紀型の地域自然共生の有効なモデルを提示し、高知のみなさまと改めて地域自然とともに暮らす豊かな未来を築き上げることができたらと願っています。