2021.2. 5学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

小林准教授の共著論文がNature Photonicsに掲載

ボルドー大学のEtienne Brasselet教授の研究グループと本学 小林 弘和准教授(システム工学群)の共著論文が、Nature Publishing Group発行のNature Photonics誌(2021年2月号)に掲載されました。

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掲載された論文のタイトルは「Sensitive vectorial optomechanical footprint of light in soft condensed matter(光波のベクトル性でソフトマター中に高感度誘起される光学的機械作用)」です。本論文では、空間中を伝搬する光ビームが持つ電場の三次元的な振動方向(偏光方向)を用いて、厚さ数十ミクロンの均一配向したネマティック液晶の空間的な配向制御を実現する技術を新たに提案・実証しています。

液晶分子は細長い棒状の分子構造を持ち、アルキル鎖と呼ばれる柔軟な分子構造を含むソフトマター(柔軟な物質)の一つです。液晶分子の長軸に対して斜めに電場をかけると分極した液晶分子が電場の強さに応じて回転するため、電場による配向制御が可能です。一方、目に見える可視光は波長1μm以下の電磁波で、伝搬方向に対して垂直な方向に高速で振動する電場を持ちます。この電場の振動方向を偏光と呼びます。この光ビームが拡がりながら液晶セルに入射すると、ビーム断面の場所毎に伝搬方向が異なるため、3次元的な偏光方向に応じて液晶分子の長軸に対して斜めに電場がかかり、場所毎に異なる配向制御が可能となります。本論文では単純な均一偏光を持つ光ビームに加えて、ビーム断面内で不均一な偏光を有するベクトルビームを用いることで、多様な配向制御が可能であることを実証しています。

本研究は液晶などのソフトマターを光波で制御する新たな手法を提案・実証しており、基礎研究として興味深いだけでなく、ソフトマターを介して光波で光波を制御する光制御ルータへの応用が期待されます。また、ソフトマターを用いて光波の偏光を3次元的に測定する新しいツールの開発への寄与も期待されます。

発表雑誌

雑誌名:Nature Photonics

論文タイトル:Sensitive vectorial optomechanical footprint of light in soft condensed matter

著者:Mohamed El Ketara, Hirokazu Kobayashi, Etienne Brasselet

巻号:Volume 15 Issue 2, February 2021

DOI:https://doi.org/10.1038/s41566-020-00726-2

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