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栗原教授がひとりでの農作業を可能にする四足歩行ロボットによる圃場での支援実験を公開

7月15日、栗原 徹教授の研究チームによる公開実験が、北川村のゆず農園で行われました。

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果樹栽培では、豊作と不作が交互に繰り返される「隔年結果」とよばれる現象がおこります。

果実がたくさん実った年は、翌年の花芽へまわる養分が減ってしまうことに起因するのだそうで、毎年の生産量を均一化し、安定的な生産を継続するには、適切な葉果比(果樹の葉の数に対する果実の数)に沿って、多くなりすぎた果実を間引く(=摘果する)必要があります。

高知県内で生産される果実のうち最も多いのがゆずで、国内生産量の半数以上を占めます。その生産者の約96%が個人経営(2020年政府統計)とのことで、大きな課題である生産人口の減少や高齢化から、摘果もほとんど行われていないのが現状で、作業者数削減と労力軽減への取り組みが期待されています。

これらを背景に栗原教授は、北川村を実験フィールドに、IoPプロジェクト(*)の一環で、共同研究者である高知大学 農林海洋科学部 濵田 和俊准教授とともに2023年から、LiDAR(**)や、これを搭載した四足歩行ロボットSpot®を使って、この葉果比推定や農作業支援等に取り組んでいます。

北川村での公開実験は、一昨年、昨年に続いて3回目。

   (参考)  >>第1回公開実験   >>第2回公開実験

今回公開した実験での提案は、「摘果までは人が行い、廃棄場所までの運搬・廃棄をSpot®が担う」というもの。

研究にご協力いただいている生産者から、「ひとりで完結できる作業を」との要望があったことがきっかけとなりました。

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作業者が摘果したゆずを収穫バッグからSpot®の背中のコンテナへ移し、「spot 捨ててきて」と命令すると、廃棄場所として設置したカゴへ確実に運搬して廃棄。

園地の地図をあらかじめ記憶しており、廃棄後は作業者のもとへ戻ります。

この日は数十回繰り返しましたが、すべて問題なく成功。

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昨年11月の収穫支援実験では、命令する作業者が代わるとSpot®が反応しない場面がありましたが、今回は非常にスムーズに作業が進んでいました。

プログラム等を担当する片岡 亮馬さん(修士課程 情報学コース1年)によると、

「ちょっとしたイントネーションの違いや語尾を伸ばすクセ等によって反応に差がありましたが、重要な単語が含まれていると認識されれば命令が実行されるようプログラムを工夫するなどして克服できた」とのことで、精度向上がはかられたことも判りました。

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今後について栗原教授は、

「いろいろな方から鳥獣害についてお話を聞いています。早急に鳥獣対策となるような機能を開発し効果を確かめたいと考えています。その他にも様々な機能を追加し、1年間通して1台のロボットを利用できるようにしたいと考えています。」

と展望を語りました。

* 本学が参画する高知県の農業を飛躍的に発展させるための産学官連携プロジェクト『IoP(Internet of Plants)が導く「Society5.0型農業」への進化』の研究課題のひとつである『省力化・付加価値化のためのセンシング・自動化』

** LiDAR(Light Detection And Ranging):レーザー光を用いて距離センシングと二次元又は三次元の空間イメージングをレーザー画像から行う技術。

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