2022.4.15学生生活 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

金重 貴也さんらがMOFの結晶が示す熱物性に対してサイズや外形などの構造的要因が与える影響を明らかにし、化学学術誌のFront Coverを飾りました

金重 貴也さん(大学院修士課程化学コース 2022年修了/指導教員:機能性ナノマテリアル研究室 大谷 政孝准教授)の研究論文が2022年4月14日Royal Society of Chemistry(イギリス王立化学会)のChemical Communicationsに掲載され、Front Coverとして採用されました。
また、本論文は、発表内容が高く評価され「Chemical Communications HOT Articles 2022」にも選出されています。

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本論文では、金属イオンと有機材料で構築された金属有機構造体 (metal-organic framework: MOF)の結晶が示す熱物性に対して、サイズや外形などの構造的要因が与える影響を明らかにしました。
金属材料や高分子材料などでは結晶サイズや分子量の大小が、それらの融点や結晶転移温度などの熱的性質に大きな影響を与えることが広く知られています。一方、比較的新しい有機無機複合材料の一つであるMOFについては、結晶のナノサイズ化がそれらの熱物性にどのような影響を与えるのかは未解明でした。
本研究では、種々の合成条件の検討により、いくつかの種類のMOF結晶について、それらの結晶性を損なうことなく限りなく小さなサイズとすることを試み、数10 nm単位(髪の毛の10万分の1)のサイズで作り分けました。このようにして作り分けたMOFナノ結晶の物性について、熱力学的観点から網羅的に検証したところ、ナノサイズ化したMOF結晶を加熱することで熱的に安定と考えられていた結晶相が全く別の結晶相へと変化するという「熱誘起結晶相転移現象におけるナノサイズ効果」を世界で初めて見出しました。この発見は、他の材料に見られるようなサイズの変化に伴う熱物性の変化がMOF結晶材料についても普遍的に見られるということを実証し、MOFの結晶構造の物理的性質の更なる理解につながるものです。

金重さんは「社会人になる前に修士課程での研究成果を論文としてまとめ、国際的に注目される論文誌の表紙を飾ることができ、大変嬉しく思います。また、研究室生活の最後にこれまで大変お世話になった大谷先生に恩返しでき、喜ばしい限りです。私はこの春、大学院修士課程を修了しました。これまで研究生活で培った経験を糧にし、社会人として頑張りたいと思います」と語ってくれました。
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論文タイトル:Thermal crystal phase transition in zeolitic imidazolate frameworks induced by nanosizing the crystal(結晶のナノサイズ化により誘起される金属有機構造体における熱的結晶相転移)

論文著者 :修士課程 化学コース2022年修了 金重 貴也
      博士後期課程 基盤工学コース3年 坂本 ひかる
      環境理工学群 准教授 大谷 政孝


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