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- 廃プラスチックを多元素触媒により価値ある化学品へ-新たなアップサイクルと省エネル…
【研究成果のポイント】
◆ 新開発の触媒により、プラスチック(PET)由来の物質から有用化学原料である「ギ酸」を生成することに成功
◆ 新触媒は、従来工程に比べ、高い選択性、安価、高耐久、低エネルギーを実現
◆ この「ギ酸」生成過程で、エネルギー消費を抑えた水素生成にも成功
◆ 廃プラ・PETの高付加価値化による循環型化学製造(アップサイクル)と低エネルギー水素生成(クリーンなエネルギー社会)の双方を実現可能
プラスチック(特にPET)は廃棄による環境負荷が深刻である一方、プラスチックを加水分解して得られるエチレングリコール(EG)(*1) は有用な化学原料となっています。エチレングリコールの電気酸化は、従来、高価なプラチナ触媒や高いエネルギー消費を伴うことが多く、より安価で選択的、かつ耐久性のある触媒の開発が求められていました。
高知工科大学 理工学群の伊藤 亮孝教授、藤田 武志教授、Sikat Bolar助教および東京科学大学物質理工学院の宮内 雅浩教授、山口 晃准教授、Wang Meiyiさん(大学院修士課程)らの研究グループは、多元素酸化物(HEO)(*2) に硫黄を導入することで、多元素酸硫化物(HEOS)(*3) の新しい触媒を開発しました。この新触媒は、エチレングリコールの電気化学酸化反応において、高い活性と選択性を示し、主生成物として、有機合成や化学原料として価値が高いギ酸(*4) が生成することが明らかになりました(図1)。
さらに、この反応を水電解の酸素発生反応(OER)の代替として用いることで、セル電圧が大幅に低減し、低いエネルギー消費で水素生成が可能であることが示されました。
これは、「廃プラスチックの高付加価値化学材料への転換(upcycling)」と「省エネルギーな水素生成」を同時に実現する有望な触媒技術を示したと言えます。
また、この開発触媒は、常温常圧下のプロセスで生成できるため、大量生産が容易であり、将来的には再生可能エネルギーと組み合わせれば「循環型の化学製造」と「クリーンなエネルギー社会」の実現の両方に貢献できる可能性があります。
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▲図1 廃プラスチックから高付加価値化学材料への転換を可能とする新規触媒(HEOS)
この成果は、2026年3月3日、ChemSusChemに掲載されました。
[プレスリリース]廃プラスチックを多元素触媒により価値ある化学品へ 新たなアップサイクルと省エネルギーな水素生成の実現に期待
コメント
「ギ酸はそれ自身が様々な場面で利用されているほか、他の物質へ変化する原料としても用いられています。このような物質を我々のまわりにあふれるPETから得ることができるこの反応は、将来大いに発展すると期待されます」(伊藤 亮孝教授)
「新規の多元素触媒を開発することができました。常温常圧の化学プロセスで大量生産できますので、社会実装に取り組んでいきます」(藤田 武志教授)
用語解説
*1)エチレングリコール(EG)
ポリエチレンテレフタレート(PET)の加水分解で得られる生成物であり、化学原料として広く用いられる。
*2)多元素酸化物(HEO:High-Entropy Oxide)
複数元素(本研究では Mn, Fe, Co, Ni, Cu など)を同じ比率で混合して形成される酸化物。
*3)多元素酸硫化物(HEOS:High-Entropy Oxysulfide)
多元素酸化物(HEO)に硫黄を導入して得られる酸硫化物。
*4)ギ酸(ホルメート)
エチレングリコール酸化の主生成物として得られる一炭素の酸化物である。アルカリ媒質中ではホルメートイオン(HCOO⁻)として存在し、有機合成や化学原料として価値が高い。
掲載論文
題 名:Sulfur-Stabilized High Entropy Oxysulfides Enable Efficient C-C Bond Cleavage in Ethylene Glycol Electrooxidation for Sustainable Plastic Upcycling to Formate(硫黄安定化多元素酸硫化物によるエチレングリコール電気酸化のC-C結合開裂促進とプラスチックの持続可能なギ酸化)
著 者: Saikat Bolar, Akitaka Ito, Chunyu Yuan, Meiyi Wang, Akira Yamaguchi, Masahiro Miyauchi, Takeshi Fujita
掲載誌: ChemSusChem
掲載日: 2026年3月3日
D O I : https://doi.org/10.1002/cssc.202502529
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