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- 塚本 真央さんが第40回中国四国地区高分子若手研究会で支部長賞を受賞
8月28日・29日に、愛媛大学で開催された「第40回中国四国地区高分子若手研究会」において、塚本 真央さん(修士課程 理工学コース1年/指導教員:機能性高分子化学研究室 林 正太郎教授)が、支部長賞(ポスター発表の部)を受賞しました。
塚本さんが発表したテーマは「配列定義ポリウレタン:その末端選択的トランスカルバモイル化を利用した構造変換」です。
これまで機能性高分子化学研究室では、長らく謎とされてきたポリウレタン(クッション等の材料となる汎用プラスチック)の分子配列・構造制御法を開発し、ポリウレタンでは実現不可能とされてきた「繰り返し構造」や「"かたち"(トポロジー)」の自由設計を可能にしました。
【プレスリリース】2023.9.13 長さ、種類、そして"かたち"が配列定義されたポリウレタンの合成に成功
この研究成果を踏まえ、今回の塚本さんらの研究では、分子配列が明らかにされたポリウレタン「配列定義ポリウレタン」をもとに、直鎖状の高分子からリング状の高分子「完全リングポリマー」を合成することをめざしました。
一般にリング状の高分子は、直鎖状のものと比較して、熱や光、化学物質などによる分解・劣化に強く、高温でも変形しにくいなど、いくつかの利点があることが知られています。
しかし、「配列定義ポリウレタン」のような分子量分布のない(構成するすべての分子の鎖長が一様で)、配列が定義された高分子から合成される「完全リングポリマー」は、これまで存在が報告されておらず、実現すれば、世界初となる非常に興味深い新物質になると期待されます。
そこで塚本さんらが、着目したのが「(トランス)カルバモイル化」という反応の末端選択性です。これによって直鎖状分子の末端同士を反応させ、リング構造を形成しようという手法で、一方の末端の一部が脱離し、もう一方の末端と結合することで環が閉じ、リング状の高分子が生成されると予測されます(▲上の図)。
実験では、この反応を末端に対してのみ、効率よく進行させる最適な反応条件を検討しました。
その結果、DBUという極めて強い塩基性を示す有機化合物を触媒として使用し、温度などの条件を整えることで、「完全リングオリゴマー」の合成に成功。最終目標とした完全リングポリマーより分子鎖が短い段階のものとなりましたが、末端のみが選択的に反応し、リング状のポリマーが形成可能であることを示す画期的な成果となりました。
受賞に際し、塚本さんは「林先生や研究室の先輩方などの力がなければ今回の成果は得られませんでした。研究の発想や実験の操作、結果の解釈など、すべてにおいて林先生や先輩方との議論や助言が不可欠で、コミュニケーションがとりやすい雰囲気をつくってくれたことが本当にありがたかったです」と、周囲への感謝を語りました。
この研究は塚本さんの卒業論文のテーマであり、現在は修士課程の研究としてさらに発展させています。今後の目標は、この合成法を応用してより長い分子鎖を持つ「完全リングポリマー」を合成すること。現在は、そのための基礎研究として、配列定義ポリウレタンの分子鎖をさらに伸長させる実験に取り組んでいます。
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