2026.4.24学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

自然の中を走ると、人は日常でも環境にやさしくなる -四万十川ウルトラマラソン参加者の追跡調査で行動変化を実証-

【ポイント】

  • 四万十川ウルトラマラソンの初参加者122人を対象に、①参加前、②参加2〜3週間後、③参加4〜5週間後の3時点で追跡した結果、リサイクルや節電など実際の環境配慮行動に有意な増加を確認。
  • 特に、参加前の環境への意識(環境配慮意図)が低かった参加者ほど参加後の行動変化が大きく、自然資源を活用したスポーツイベントが、参加者の価値観や日常行動の変容を促す可能性を示唆。
  • マイカップ持参や分別回収の徹底など、自然環境への理解を深める運営や情報発信と組み合わせることで、イベントを通じた行動変容をさらに高められる可能性があり、スポーツツーリズム政策などへの応用も期待。

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▲四万十川ウルトラマラソン(実行委員会提供)

東洋大学の山下玲准教授、高知工科大学の前田和範講師、早稲田大学の高田紘佑助教(※旧所属)による研究グループは、自然環境下で開催されるスポーツイベントへの参加が、参加者の日常的な環境配慮行動(Pro-environmental behavior)*1に与える影響を明らかにしました。対象は、四万十川ウルトラマラソンに初参加したランナー122人です。従来研究では、単一時点での調査が多く、イベントを通じた行動変化まで十分に検証されていないため、本研究では、①参加前、②参加2〜3週間後、③参加4〜5週間後の3つのタイミングで追跡調査を行い、その結果、参加後に環境配慮行動が有意に増加しました(つまり、イベント参加後しばらくしてからも環境に配慮した行動が持続)。特に、参加前の環境配慮意図が低かった人ほど、その後の行動の伸びが大きいことが示されました。

本研究は、自然を活用したスポーツイベントが、観光や地域振興の機会にとどまらず、参加者のその後の生活行動にも影響しうることを示した点に特徴があります。論文は、国際的に高い評価を受ける学術誌 Journal of Sustainable Tourism (Impact Factor=7.8)に掲載されました。本研究は、観光分野だけでなく、持続可能なスポーツイベントのあり方を考えるうえでも役立つ成果です。

分析結果のまとめ.png

[プレスリリース]自然の中を走ると、人は日常でも環境にやさしくなる -四万十川ウルトラマラソン参加者の追跡調査で行動変化を実証

コメント

四万十川ウルトラマラソンは、雄大な自然環境と地域の温かい支えの中で成り立つ、高知県を象徴するスポーツイベントの一つです。本研究では、この大会を対象に、自然の中でのスポーツ体験が参加者の環境配慮行動に影響を与えうることを明らかにしました。高知県の自然資源が持つポテンシャルを、スポーツマネジメント研究として世界に発信したいという思いが、本研究の背景にあります。本研究は、研究チームのそれぞれが持つ専門性や強みを持ち寄りながら進めてきた成果であり、学術的な貢献に加え、地域の自然資源やスポーツイベントを支える関係者の取り組みが持つ価値を可視化するものでもあります。今後も、スポーツが人々の行動や地域社会にどのような価値をもたらしうるのかを、地域資源や持続可能性の視点から検証していきたいと考えています。
(前田 和範講師)

用語解説

*1)環境配慮行動(Pro-environmental behavior)
ごみ分別、リサイクル、省エネルギーなど、環境負荷を減らすために日常生活で行う行動のこと

掲載論文

題 名: From intention to action: a longitudinal study of pro-environmental behavior change through nature-based sporting events
著 者: Rei Yamashita, Kazunori Maeda, Kosuke Takata
掲載誌: Journal of Sustainable Tourism
掲載日: 2026年4月8日
D O I : https://doi.org/10.1080/09669582.2026.2653025

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