2026.6.25学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

液晶性分子骨格を結晶格子に組み込み 伸縮する分子結晶を合理的に設計 ー1.52倍の長さに変化する結晶アクチュエーターを実現-

高知工科大学 理工学群の林 正太郎教授らは、静岡大学 理学部の関 朋宏准教授、守谷 誠准教授らと共同で、液晶性を示す分子骨格を剛直な結晶格子の中に密に整列させることで、温度変化に応じて結晶の長さが最大1.52倍まで変化する新規分子結晶アクチュエーターの開発に成功しました。

【ポイント】

  • 液晶分子骨格(nIB)を金錯体結晶(Au-nIB)の格子内に密集・整列させることで、温度変化による相転移が巨視的な一軸方向の結晶伸縮に変換されることを実証しました。
  • 伸縮前後の結晶の長さの比(ρL)が最大1.52に達し、これは分子結晶としてトップクラスの値です。また、結晶の長さ変化がメソゲン層(*1)の厚みの変化と逆比例するという定量的な設計則を確立しました。
  • アルキル鎖の長さを変えることで伸縮の方向や大きさを制御でき、ドメインエンジニアリングにより単結晶上で多段階の伸縮を自在に操れることも示しました。
  • 将来的に、人工筋肉・マイクロアクチュエーター・ソフトロボティクスなど次世代の柔軟デバイスへの応用が期待されます。
      
林先生 静大リリース3.png
▲Au-4IBからなる結晶の写真と温度変化による結晶の伸縮

(*1)メソゲン・メソゲン層:
液晶性を生み出す棒状の剛直な分子骨格部分(メソゲン)が積み重なって形成する層状の構造。本研究ではnIB分子のアルキル鎖を除く部位がこれに相当し、この層の厚みの変化が結晶長変化と直結する。

[プレスリリース]液晶性分子骨格を結晶格子に組み込み 伸縮する分子結晶を合理的に設計 ー1.52倍の長さに変化する結晶アクチュエーターを実現-

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(JP22H02155, JP22K19058, JP24K01574)、科学技術振興機構(JST)PRESTO(JPMJPR21AB)、JST FOREST Program(JPMJFR211W)、JST CREST(JPMJCR22O4)、静岡大学グリーン科学技術研究所、公益財団法人JKA、一般財団法人サムコ科学技術振興財団、公益財団法人住友財団等の支援のもとで行われました。

コメント

固体の物質を温めたとき、皆様はどのような変化を想像するでしょうか。多くの場合、物質は「正の熱膨張」を示し、全体が均一に膨らみます。しかし、有機結晶は時として私たちの常識を超える不思議な熱膨張を示します。全方向に同じように膨らむのではなく、特定の一方向にだけ大きく伸びることがあるのです。

今回、静岡大学との共同研究によって明らかにしたのは、加熱によって結晶の一方向のみが極めて大きく伸長する有機結晶です。この特異な熱応答は、分子レベルで精密に設計された結晶構造によって実現されています。

このような異方的な熱膨張特性は、温度変化を微小な機械運動へと変換する新しい機能材料として期待されます。将来的には、ナノ・マイクロスケールのアクチュエータやセンサー、さらには外部環境に応答して自律的に動作するスマート材料の開発につながる可能性があります。本研究は、有機結晶が持つユニークな構造変化を活用した次世代材料設計の新たな可能性を示す成果です。
(林 正太郎教授)

掲載論文

題 名:Densely packed and well-aligned liquid-crystalline scaffolds drive controllable axial crystal strain
著 者:関 朋宏、矢野 彰人、斉藤 詢、鈴木 魁星、守谷 誠、佐藤 寛泰、矢野 圭悟、林 正太郎
掲載誌:Journal of the American Chemical Society
掲載日:2026年6月21日
D O I :10.1021/jacs.6c03669

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