超低周波音を防災につなげる世界初の「津波センサー」を開発

山本 真行YAMAMOTO Masa-yuki

専門分野

宇宙計測工学、超高層物理学、画像音声情報処理、理科教育


理学と工学の融合から生まれたインフラサウンド津波センサー

山本先生は理学と工学の融合をめざし、宇宙周辺の観測やデータの解析はもちろん、観測装置の開発までも学生たちと一緒に行っている。その成果の一つとして注目を集めているのが、津波発生を検知し、規模や到達時間などを速報するインフラサウンド津波センサーだ。まさに緊急地震速報の"津波版"と言えるもので、将来における迅速な津波避難につなげようとしている。

 インフラサウンドとは、人間が感知できない超低周波音のこと。地震や津波、火山噴火など巨大災害を起こす地球物理学的変動に伴って発生し、大規模な現象の際には1,000kmを越える遠方まで到達することもある。10年以上前からインフラサウンドに着目し、研究を行ってきた山本先生は、「この音をいち早くキャッチし、広く知らせることができれば防災につながるかもしれない」と開発をスタート。実用化に向けて企業と共同で技術や精度を向上させてきた結果、2015年2月に製品化が実現した。国産のインフラサウンドセンサーが製品化されるのはこれが初めてのことで、津波に特化したインフラサウンドセンサーとしては世界初となる。

 従来の津波センサーは海洋設置型がほとんど。三陸沖にも設置されていたが、東日本大震災では現地の通信、放送、電源インフラが破壊されたことで、津波情報が行き渡らず、被害の拡大につながった。この製品は陸上設置型で取り扱いが簡単。監視エリアが広い上、通信や電源がなくても、独立してしばらく動くというメリットもある。

 さらに画期的なのは、地震が発生し、インフラサウンドがセンサーに届いた瞬間に、津波の規模が予測できるようになるかもしれないということ。つまり、"津波マグニチュード"のより正確でスピーディーな算出につながる。これまで津波マグニチュードは、過去の津波記録をもとに算出することしかできず、東日本大震災では実際の津波よりも低く想定されたことが被害の拡大につながった。「減災のためにも、リアルな観測で得た数値から正確な規模を予測し、今足りない部分をフォローしていきたい」と意気込んでいる。

全国の沿岸部に配置し、津波観測網の確立をめざす

 現在はインフラサウンド津波センサーを活用して、地域密着型の津波防災システム構築のための観測網を高知県内につくろうと動き出している。南海トラフ巨大地震の被害想定で日本一の津波高を突きつけられた黒潮町を中心に、土佐清水市の足摺岬や室戸市の室戸岬など県沿岸部に合計15台を設置。センサーの精度を現場で検証しながら、製品の信頼性を高めている。

 また多地点で観測するほどデータの精度は高まり、正確な津波到来時刻、規模情報の検知・伝達が可能になるため、「県沿岸部への設置数をもっと増やしていきたい」と言う。さらに今後は津波被害予想地域を中心に全国規模の観測網を確立し、実証研究を進めようとしている。

「既存の津波防災を補完するという立ち位置で、陸上施設を最大限に生かしたセンサーのネットワーク化と防災システムの構築をめざしたい。現在普及している海上設置型のセンサーは、数億〜数百億円クラスですが、こちらはそれに比べると格段に安く、メンテナンスも簡単。陸上に設置できるので、停電以外の場面ですぐに壊れることはないでしょう。将来的には国内だけでなく、インドネシアやチリなど、津波の被害を受けそうな日本以外の国にも設置していきたいと考えています」

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