2017.11.24地域・一般 / 研究 / 研究者・企業

黒潮町で「複合型インフラサウンド津波センサー」成果報告会を開催

☆2S1A9117.jpg11月24日、黒潮町保健福祉センターにおいて「津波防災のための超低周波音観測の現状と課題 ~黒潮町・現地報告会2017~」と題する本学システム工学群・教授/総合研究所インフラサウンド研究室・室長 山本 真行らが開発し、昨年、黒潮町内5ヶ所に整備した「複合型インフラサウンド津波センサー」の成果報告会を開催しました。

本学では、JST(科学技術振興機構)から開発費の支援を得て東日本震災前の平成18年度より本方式の基礎研究を実施、平成27年2月には企業と共同して同センサーを製品化しました。平成28年度にはセコム科学技術財団の研究助成課題に採択され、黒潮町で本技術を活かした地域防災システム構築への準備研究を開始しました。黒潮町での各種データの蓄積と分析を基に研究成果が広がり、同助成の継続および自治体・住民による協力を得て本年度は高知県全域に計10台のセンサー追加設置を進めています。

この度、住民からの設置場所の提供、黒潮町情報防災課の行政支援等、多くのご協力をいただいた黒潮町の皆様に向け、成果報告会を開催しました。会場には、学界研究者の他、黒潮町関係者、地域の方々など約40人が参加し、高知県や黒潮町の地域特性を踏まえた防災の課題等について議論しました。

報告会では、まず、山本教授よりこの1年間の成果として、昨年9月の台風16号接近時や同年10月の阿蘇山噴火時にも、上述のセンサー群が特徴的なインフラサウンドを感知した事を報告し、津波以外での活用の可能性についても触れました。また、既に足摺岬・室戸岬等にもセンサー設置を終えており、本年度中に高知県全体約15ヶ所でセンシングが出来る体制を整え、将来は日本各地の沿岸域に展開していく提案も報告しました。

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その後、九州大学・大学院理学研究院地球惑星科学部門 中島 健介 助教、国立研究開発法人情報通信研究機構オープンイノベーション推進本部 西村 竜一 氏、日本気象協会事業本部防災ソリューション事業部主任技師 村山 貴彦 氏よりそれぞれの取り組みについて報告がありました。本年度より文部科学省の科研費を得て本学と共同研究を進めている九州大学の中島助教からは、インフラサウンド発生メカニズムの理論的背景や数値シミュレーション結果について解説され、「インフラサウンドの強さは津波波源域における高さを示し、発生場所や規模をいち早く特定できる可能性があるので、津波発生時の即時的な分析と住民への伝達方法などが課題である」と説明がありました。

約40分間の質疑応答では、地元住民より「実際の津波の際、避難時間の確保にインフラサウンドでの検知がどれだけ有効なのか」、「海上に置くともっと早く感知できるのでは」など熱心な質疑応答が続きました。山本教授は、本方式の有効性・特長等を説明しつつ回答し、避難場所等に同センサーによる警報装置を設置することの提案もあり、終始活発な議論が交わされ、住民参画型の本研究における今後の研究推進と本事業の広域展開に有効な情報交換の機会となりました。

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