2022.4.11学生生活 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

坂本ひかるさんらがオルトフタル酸で架橋された金属有機構造体の結晶構造変化を明らかにし、英国学術論文誌の表紙(Back Cover)を飾りました

博士後期課程 基盤工学コース3年の坂本 ひかるさん(指導教員:機能性ナノマテリアル研究室 大谷 政孝准教授)の研究論文が、2022年2月7日Royal Society of Chemistry(イギリス王立化学会)のCrystEngCommの表紙(Back Cover)として採用されました。

CrystEngCommは、特性、多形性、ターゲット材料、結晶性ナノ材料など、結晶工学のあらゆる側面に関する独自の研究総説を公開している査読されたオンライン科学ジャーナルであり、Journal Citation Reportsによると、「結晶学」カテゴリの23のジャーナルの中で2番目にランク付けされています。

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本論文では、「オルトフタル酸で架橋された金属有機構造体の結晶構造変化」を報告しました。
金属有機構造体(metal-organic framework: MOF)の中でも、フタル酸系配位子で架橋されたMOFは、柔軟な骨格構造を持つことで知られています。近年、フタル酸系MOFの構造変化に伴う特異なガス吸着・分離能を利用したH2吸蔵材やCO2吸着剤の開発が注目されています。しかし、フタル酸系MOFは容易に加水分解するため、結晶-結晶転移または結晶-アモルファス転移の機構について詳細な研究例はほとんどありませんでした。

本研究では、亜鉛-オルトフタル酸系MOF(Zn(o-H4P)-MOF)を出発物質とした特異な構造転移を発見しました。配位子(o-F4PA または p-F4PA)が溶解したDMF 中にZn(o-H4P)-MOFを分散し、粉末X線回折により経時変化を追跡した結果、連続的な結晶構造の変化が確認されました。また、構造変化前後の単結晶X線構造解析より、亜鉛-配位子周りの歪みが構造転移の進行に重要であることを明らかにしました。

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坂本さんは「論文の裏表紙に掲載いただき光栄です。構造を変化させて完成した物質は特別なものではありませんが、転移の過程をたどりメカニズムを解明するという、人とは違う切り口で研究をしてきました。先行研究が少ないため不安になることもありましたが、大谷先生や研究室のメンバーにサポートいただき根気よく研究を続け、成果をあげることができました。大学生活残り一年、より一層研究に精進してまいります」と語りました。



論文タイトル:Unusual ligand substitution of a metal-organic framework with distorted metal-ligand coordination(オルトフタル酸で架橋された金属有機構造体の結晶構造変化)

論文著者 :博士後期課程 基盤工学コース3年 坂本 ひかる
      環境理工学群 准教授 大谷 政孝
      環境理工学群 講師 伊藤 亮孝

論文はこちらから

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