2023.6.19地域・一般 / 地域貢献 / 研究 / 研究者・企業

朴客員教授が「脳の老化現象(脳萎縮&白質病変)と危険運転行動」をテーマに講演しました

6月9日、本学の地域連携機構 地域交通医学・社会脳研究室主催の特別セミナー「安全運転に必要な心と脳のあり方」を開催し、医療関係者や交通業界関係者を中心に約50名の方にご参加いただきました。

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司会進行を務める熊谷 靖彦名誉教授から、警察庁が発表した統計調査によれば、交通事故による死者数は減少している一方で、高齢者の死者数は横ばい、むしろ全死者数に占める高齢者の割合は増加している現状が語られると、朴 啓彰客員教授(地域連携機構 地域交通医学・社会脳研究室/高知検診クリニック脳ドックセンター長)が登壇し、「脳の老化現象(脳萎縮&白質病変)と危険運転行動」をテーマに講演を行いました。

朴客員教授は、脳ドックという日本独自の予防医学から創出される健常脳のビックデータから「交通脳データベース」という新たな概念を提起し、健康長寿と運転寿命を共に延ばして、超高齢社会を活性化する研究を行っています。

加齢、喫煙や高血圧等の生活習慣の乱れおよび生活習慣病により生じる白質病変は、大脳白質内に無数に張り巡らされた毛細血管がその周囲の神経線維と神経血管カップリングを形成し、毛細血管のダメージとともに神経線維が傷害される状態です。このことにより、神経ネットワークが上手く働かず、誤判断をしたり、車の運転のような遂行機能が低下したりすることが分かっています。
朴客員教授の研究では、脳ドックで得られる健常脳のデータベースとその受診者の事故歴、長期の自動車学校でのモニタリング調査から、白質病変のあるドライバーは交差点での事故や高速道路での逆進入を起こしやすいこと、運転中にマルチタスク(暗算計算)を行った場合に加え、通常運転時においても安全運転能力が低下していることが分かっています。また、本人の自覚なく進行する白質病変ですが、CRT運転適性検査や動体視覚認知(DVC)検査で簡単に発見することができ、生活習慣の改善、生活習慣病の治療により加齢脳(白質病変・脳萎縮)は予防・回復することが可能であることを報告しました。
最後に、ヘルスマネジメントとリスクマネジメントの相互作用による健康寿命と運転寿命の同時延伸化を提唱し、講演を締めくくりました。

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朴客員教授のほか、川人 光男氏(国際電気通信基礎技術研究所 脳情報通信総合研究所所長)と蓮花 一己氏(帝塚山大学元学長/帝塚山大学心理学講座名誉教授)が講演し、脳医学・脳科学・心理学の3分野から運転行動を論じ、暴走・逆走事故が多発している現状に一石を投じるセミナーとなりました。

参加者からは「児童を安全に通学させるため構想を練っているところだが、高齢者の方に安全運転を心がけてもらうためにはどのような対策が効果的か」といった質問や「車を運転する者として、また、歩行者としても脳のメカニズムと運転心理を理解することができて良かった」「加齢脳を他人事とは思えず聞いていた。生活習慣を見直し、予防に努めたい」といった感想が寄せられました。

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