2024.7.22学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

塗布法によるWGM光共振器の合成、量産化と大面積化へ向けた簡便なプロセスを実現

有機LEDや光センサーなどのデバイスに利用する次世代の光源として、光共振器(*1)が注目されています。光共振器は、光を一定時間閉じ込められる構造を持つため、光損失が少なく、低エネルギーでデバイスを作動させることができるからです。
なかでも、WGM光共振器(*2)は、円形の形状で、光が全反射しながらループし続けるという有意な性質を持っています。ミクロンスケールのマイクロ球体は、WGM光共振器として共振光を生じさせ、その球体サイズや屈折率によって光出力の高い光源となります。
しかし、マイクロ球体のような有機光共振器は、発光性分子の自己組織化(*3)によって作製されるため、均質性を確保することが難しく、作製プロセスが複雑で大量生産に向かないという問題を抱えています。

林 正太郎教授松尾 匠助教、谷久保 泰樹さん(修士課程 化学コース 2023年度修了)は、シリカゲルなどのマイクロ球体への発光性分子の塗布法を新たに開拓し、WGM光共振器の簡便な作製に成功しました。さらに、それらが環境変化を感度よく捉えるセンサーとして機能することを明らかにしました。

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このことにより、多様な物性を持つ光共振器を大量に作製し、たくさん並べて大面積にすることが可能となり、マイクロ光センサーやレーザー光源として、幅広く応用することができます。

この成果は、2024年7月20日、Advanced Optical Materials誌(Wiley)に掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

研究者コメント

「あたらしい高分子材料の作り方を行うものとして、社会実装に近づくためにWGM光共振器の新規開発は重要なポイントでした。しかし、作り方を想像できても、その結果を明瞭に解釈し具現化するには、より光物性に特化した専門性を持ち光材料化学に強い意識を持つ松尾先生の力が必要でした。本成果では、これまで合成してきた光る分子とマイクロ球体をミックスするだけでできる作製プロセスと、そのWGM共振(特許取得済)がセンサーとして機能することも明確になり、新しい材料を作り方から提供できたことに非常に喜んでいます」(林 正太郎教授)

掲載論文

題 名: Facile Wet-Process to Free-Standing Whispering Gallery Mode Resonators Mixed with Spherical Silica Gel and π-Conjugated Molecules(シリカ球体とπ共役系分子を混合した簡便な塗布法による自立型WGM共振器)
著 者:Takumi Matsuo, Hiroki Tanikubo, Shotaro Hayashi
掲載誌:Advanced Optical Materials
掲載日:2024年7月20日
D O I :https://doi.org/10.1002/adom.202401119

用語解説

*1)光共振器
  光が何度も往復または周回するように鏡を配置し、光の定常波を作り出す装置。

*2)WGM光共振器(Whispering Gallery mode光共振器)
  微小な領域に光を効率良く閉じ込める球状や円盤状などの光共振器。

*3)自己組織化
  結晶化など、分子が規則的に集合する秩序立った構造や形状をとること。

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