2024.11. 7地域・一般 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

脱炭素社会の実現へ向け大きく前進 多元素酸化物触媒の常温常圧合成に成功

理工学群の藤田 武志教授は、同学群の伊藤 亮孝教授Bolar Saikat助教、筑波大学数理物質系の伊藤 良一准教授とともに、多元素酸化物触媒を常温常圧下で合成することに成功しました。

世界的な脱炭素化の流れの中で、次世代エネルギーとして注目される水素を効率的に生成し、また、発電、製油、製鉄等の過程で発生する二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスを有用資源に転換または無害化する高性能な触媒が求められています。
なかでも、多元素からなるナノ合金や酸化物触媒は、従来に比べて高い活性と優れた耐久性という触媒機能を持つため、実用化が期待されています。しかし、これまでに様々な合成法が提案されてきましたが、主に高温・高圧環境で行うハイドロサーマル法や、瞬間加熱炉を用いた複合化法が採用されてきました。このため、より安価で簡便な製造方法の開発が求められていました。

藤田教授らは、多元素酸化物触媒を常温常圧下で化学合成する方法を開発。この手法は、金属塩、アルカリ溶液と酸化剤を混合するだけの非常に簡単な方法であり、容易に大量生産が可能です。また、高温・高圧条件や特殊装置を必要とせず、室温で簡単に化学合成ができます。これは、12元素を含む酸化物触媒を作製し、水の電気分解における酸素発生電極としての優れた活性と高耐久性を実証することで、その有効性を確認しました。
さらに、この方法は、33種類の元素に適用可能であることが判明し、多種多様な多元素酸化物の合成が可能となります。これにより、人工知能(機械学習)を活用した新規触媒の開発も期待されます。

藤田先生.png

走査透過電子顕微鏡(STEM)による元素マッピング像
 (a)6元素酸化物 (b)12元素酸化物

この新しい手法は、従来の製造コストを大幅に削減し、実用化に向けた大きな前進をもたらしました。これにより、多元素酸化物触媒はカーボンニュートラルの実現に貢献していくでしょう。

この成果は、2024年11月5日、ACS Materials Lettersに掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

掲載論文

題 名: Rapid Chemical Synthesis of High-Entropy Oxide Colloids under Ambient Conditions
著 者: Saikat Bolar, Akitaka Ito, Yuan Chunyu, Yoshikazu Ito, Takeshi Fujita
掲載誌: ACS Materials Letters
掲載日:2024年11月5日
D O I :https://doi.org/10.1021/acsmaterialslett.4c01849

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