2025.5.28学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

古田 守教授がSID Display Week 2025でDistinguished Paper Awardを受賞

5月11~16日にアメリカで開催された、ディスプレイ技術の最新動向を紹介する学会「SID Display Week 2025」において、理工学群の古田 守教授が東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社と共同で開発した酸化物半導体薄膜トランジスタの高性能・高信頼性化技術がDistinguished Paper Award(卓越論文賞)を受賞しました。

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(写真 右:古田教授)

酸化物半導体薄膜トランジスタは、有機ELテレビからスマートウオッチまで広範囲なディスプレイに使用されています。代表的な酸化物半導体であるIn-Ga-Zn-O(IGZO)の電子移動度は約10㎠/V・sですが、更なる電子移動度(性能)の向上が求められています。これまで多くの高移動度酸化物半導体材料が提案されてきましたが、トランジスタの性能と耐久性(信頼性)の間にはトレードオフがあり、高性能・高信頼性酸化物半導体トランジスタの実現には大きな壁がありました。

そこで、古田教授は、信頼性劣化の要因である酸化物半導体に取り込まれる水素の起源に着目し、水素を含まない原料による絶縁膜形成技術を東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社と共同で開発し、酸化物半導体への余剰な水素の取り込みを抑制することで、薄膜トランジスタの信頼性を大幅に改善することに成功しました。

具体的には、高移動度酸化物In-Ga-Zn-Sn-O((IGZTO),電子移動度23.2㎠/V・s)を半導体層に、水素フリー酸化シリコン(SiO₂)膜をゲート絶縁膜に用いたトップゲート型トランジスタにおいて、従来素子に比較して電子移動度2.3 倍(23.2㎠/V・s)、環境温度80℃における加速試験にて、正ゲート電圧ストレス(PBTS)試験における信頼性を約300倍向上することに成功しました。

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これは、酸化物半導体トランジスタの高性能化と高信頼性化を両立させるキー技術となると同時に、酸化物半導体の応用範囲の拡大に寄与することが期待されます。

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受賞を受けて、古田教授は「酸化物半導体トランジスタの性能と信頼性の両立は社会実装において欠かせない視点です。今回の受賞は性能を維持しつつ信頼性を大幅に向上できることを示した結果が評価されたと考えており、大変嬉しく想います。今後も酸化物半導体の応用拡大に寄与する研究成果の創出に取り組んでいきたいと思います」と話しました。

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