2019.9.27在学生・保護者 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

渡邊助教らの研究グループが「緊張を乗り越える脳内メカニズム」を解明しました

渡邊 言也 助教(総合研究所脳コミュニケーション研究センター)、ラトガース大学心理学研究科のジャミル P. バーンジ助教、マウリシオ R. デルガド教授、名古屋大学大学院情報学研究科の田邊 宏樹教授らの研究グループが、行動実験とfMRI(磁気共鳴機能画像法)を組み合わせて、人間が興奮状態(緊張感やプレッシャー)を抑制的にコントロールし、課題の成績を向上させる脳内メカニズムを解明しました。

本研究の成果は、2019年8月末に米国科学誌「NeuroImage(ニューロイメージ)」のウェブサイトに速報版として掲載され、11月15日発行の誌面にも掲載されます。

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行動実験では、参加者が頭の中で5秒数え、なるべく近いタイミングでストップするストップウォッチ課題を行い、賞金額によって参加者の生理的覚醒レベルの変化(※)を目の瞳孔サイズで計測しました。解析の結果、将来成功する試行においては、課題を行う直前から、感情を抑制する腹内側前頭前野(※)が、特に感情の中枢である扁桃体(※)を抑制的に制御していることが明らかになりました。また、腹内側前頭前野から扁桃体への情報伝達が強い人ほど、課題の平均成績が良いことが明らかになりました。

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(興奮の上昇によって課題遂行寸前に変化する脳活動と、それをコントロールする脳ダイナミクス)

この結果は今後、強いストレスやプレッシャー状態に晒されることの多い職業、例えば、消防士や救急救命士、アスリートや演奏家などが、それぞれの現場で自身の持つパフォーマンスを最大限に発揮できるようになるためのトレーニング方法の開発などにつながることが期待されます。

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※生理的覚醒の変化:脅威や挑戦を目の前にして、心拍が上昇したり、呼吸が荒くなったり、手に汗をかいたり、瞳孔が散大するような体の反応をさす。多くの場合は緊張感やプレッシャー、または「あがり」として意識される。
※腹内側前頭前野: 脳の前方にある前頭前野は、思考や創造性、反応の抑制などを司る中枢であるが、腹内側部はその中でも下の内側部分である。この領域は特に、恐怖感や緊張感に対し、心を落ち着けさせるような感情制御(Emotion regulation)に関わっていると考えられている。
※扁桃体:大脳辺縁系に位置する脳領域。感情の中枢と考えられており、感情を伴う学習や記憶の処理に関与している。また、近年、生理的覚醒にも関与していることが報告されている。

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