2019.10.28在学生・保護者 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

藤田教授らの共同研究グループが「軽量で安全な水素キャリア材料」を開発しました

東京工業大学材料系の宮内 雅浩教授、筑波大学の近藤 剛弘准教授、Nguyen Thanh Cuong(ニュエン タン クオン)研究員、岡田 晋教授、本学の藤田 武志教授(環境理工学群)、東京大学の松田 巌准教授らの共同研究グループは、ホウ素と水素の組織比が1:1のホウ化水素シートが室温・大気圧下において光照射のみで水素を放出できることを見出しました。

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(光照射によってホウ化水素シートから水素が放出される様子を示す模式図)

ホウ化水素シートは、本研究グループが初めて合成に成功した爆発のリスクがない軽元素のホウ素と水素からなるナノシート状の物質で、その質量水素密度は8 %以上と極めて高いことから、爆発のリスクがある水素ガスボンベに代わる軽量で安全な水素キャリア(※)としての応用が期待されていました。従来の水素吸蔵合金における質量水素密度は、高いものでも2 %程度であり、シクロメチルヘキサンのような有機ハイドライドも有望な水素キャリアとして知られますが、その質量水素密度は6.2 %で、水素放出には300℃以上の加熱が必要でした。

本研究グループが見出した現象は、ホウ化水素シートに紫外光を照射するという単純な操作のみで、室温・大気圧という穏やかな条件で水素を取り出すことができるというものです。これを応用することで爆発性のある水素の運搬を、高温や高圧を要する従来手法よりもはるかに安全に達成することが期待できます。さらに本研究では、計算科学によって電子構造の観点から、光照射による水素放出のメカニズムを解明することに成功しました。

今後は、現行の車載用燃料電池に搭載されている高圧水素タンクに変わる、安全・軽量・簡便なポータブル水素キャリアとしての応用が期待できます。

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藤田教授は「技術の革新には、既存材料の改良ではなく、新しい材料を創り出すことが重要だと思います」と研究に対する意欲を語ってくれました。

本研究の成果は、2019年10月25日に「Nature Communications」に掲載されました。本誌は、生物学、物理学、化学および地球科学のあらゆる領域における高品質な研究を出版するオープンアクセスジャーナルであり、各分野の専門家にとって非常に意義のある重要な進歩を示した論文が掲載されます。

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※水素キャリア:水素を貯蔵・輸送するための担体。高圧水素ガスボンベ、液化水素、アンモニア、有機ハイドライド、水素吸蔵合金などが知られる。

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