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- 門田准教授らの研究グループが0.05秒の時間差の有無を見分ける脳の部位を明らかに…
本学 総合研究所 脳コミュニケーション研究センターの木村 岳裕客員准教授(金沢大学)、門田 宏准教授、岩田 誠教授は、宮崎 真教授 (静岡大学)、河内山 隆紀研究員(国際電気通信基礎技術研究所)らとの共同研究により、0.05秒という究極に短い時間の知覚に関わる脳の部位を明らかにしました。
時間を捉える能力は、私達の日常生活のなかの様々な行動を支えていますが、「時間」の感覚器官は存在せず、 時間の検知 、評価 、生成は脳によっておこなわれており、日 ・ 時 ・ 分 ・秒といった時間長の違いによって携わる脳の部位が異なることが知られています。また、微細な時間差の知覚は、音楽、スポーツ、ものづくりなどでの精緻な行動を実現するために必要な神経機能の一つといえます 。
(実験説明図)
本研究グループは、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)*1を用いた脳活動計測実験を行い、両手に受けた触覚刺激が同時であったか(時間差:0秒)、あるいは、短い時間差(0.05秒)があったのかを判断している時に、脳の右半球の「下頭頂小葉」が活動していることをつきとめました。0秒/0.05秒という時間は、時間知覚に関わる脳活動を調べたこれまでの研究のなかで最も短い時間であり、特に触覚刺激を対象とした研究は世界で初の試みとなりました。
(同数判断を行っている時と比べて同時性判断を行っている時に強い稼働を示した脳部位)
本成果は、たくみ(巧/匠)の技を生み出す脳の仕組みを解明し、その訓練法や継承法を考案、開発していくための基盤知見の一つとなることが期待されます。さらに本研究が発展していけば、人間のたくみの技を模したロボット制御などに、その知見が応用されていくことも期待されます 。
門田准教授は「2014年から本研究を開始し、実験のデザイン考案、実験の実施・MRIデータの分析などに携わってきました。今回、論文として形になり非常に嬉しいです。本研究の成果を踏まえると、経頭蓋直流刺激*2を下頭頂小葉に施すことにより、刺激時間差の検知、評価能力向上の可能性が考えられます。今後さらに様々な観点から研究を進めていきたいです」と抱負が語られました。
なお、本研究成果は 英国の Nature Publishing Group の刊行するオンライン科学誌Scientific Reportsに掲載されました。
プレスリリースはこちらから
高知新聞(2020年1月23日)でも紹介されました。
*1 機能的磁気共鳴画像法(fMRI)
MRI(磁気共鳴画像)を用いて、脳の活動した場所を可視化する方法。たとえば私達が何かを見たり、触ったり、体を動かしたりすると、それに関連した脳の領域の神経細胞が活動し、酸素が消費されます。すると、消費された酸素を補うために、活動した神経細胞の周りに血流が集まります。その血流量の変化と酸素代謝の変化をMRIによって捉えることにより、活動している脳領域を特定します。現在、人間の脳の活動領域を調べるための最も優れた手法の一つです。
*2 経頭蓋直流刺激
頭部に貼付した電極から微弱な直流電流を流し、脳活動を変調する方法です。たとえば、一次運動野の直上にあたる頭部位に陽極を置いて1mAの電流を数分~10分程度流すと増強効果、陰極を置いて流すと抑制効果が生じることが報告されています。
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