2021.1. 5研究 / 研究者・企業

山本教授が単一材料の金属酸化物薄膜、電気・光学特性の自在制御に世界初成功

山本 哲也教授(総合研究所 マテリアルズデザインセンター)と住友重機械工業株式会社の研究グループは、RPD(反応性プラズマ蒸着)成膜装置を基に自在設計的酸化プロセスも可能とさせる先駆的装置を共同研究開発しました。今期、単一材料を用いた厚さ50nmの金属酸化物薄膜(1000nm=1マイクロメートル)の電気・光学特性を酸化プロセスのみで制御することに世界で初めて成功しました。

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同研究グループは、住友重機械工業株式会社製の反応性プラズマ蒸着法装置を用い、酸素正イオン(O+)と酸素負イオン(O-)とを同時に発生させ、O+ イオンは薄膜成膜に、O- イオンは酸化状態を操るイオンとして使い分けることで、単一材料において、電気的応用だけではなく、吸収・発光材料となる特性を持った機能創製に成功しました。

インジウム酸化物を用いた実証試験では、電気伝導率は金属状態から半導体状態の間で結晶構造にダメージを与えることなく大幅な制御が可能となりました。

材料特有の吸収・発光波長は、従来はより長い波長への機能制御は化学結合状態を破壊するおそれがあり、難しいとされてきました。本研究開発では、当課題に対し、局所的電子化学結合状態を操る量子論的コンセプトを考案(学術論文内で提案)し、紫外線354nmから可視紫色411nmまで自在制御が可能であることを実証しました。

200度℃まで熱した基板を用い、プラズマオン状態で正イオンのみによるスズ添加酸化インジウム(ITO)薄膜を作成後、低温・低電圧下での高密度プラズマオンオフ操作による新規な酸化法を考案しました。具体的には残留 O- イオンにプラズマオフ状態でバイアス電圧をかけて酸化する真空プロセスおよびその装置を開発し、電気・光学特性の自在制御の実用化を可能としました。

世界初となる効率的な酸素負イオンを使った酸化プロセスが、同一装置内真空プロセスで完結することにより実現する、加工過程で生じやすい歩留まり低下を抑えた高い再現性は、マルチマテリアル化が抱えるコスト課題に実用的な解決をもたらしました。

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山本教授は「今後も本プロセスの研究をさらに進め、金属酸化物が有する潜在的機能を見出し、顕在化させる量子ゆらぎ・熱ゆらぎ制御のアイデアやコンセプトを追求していきたい」と抱負を語りました。

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