2021.9.27地域・一般 / 地域貢献 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

福本 昌弘教授らの研究グループが低コストで運用可能な水位通知システムを開発

情報学群の福本 昌弘教授、合同会社Office asoT、株式会社シティネットの共同研究グループは、到達性、回折性に優れた電波(LPWA 429MHz帯)を用いた、低コストで運用可能な水位通知システムを開発し、高知県四万十町で実証実験を実施しました。

少子高齢化や人口減少の影響により、中山間地域では地域インフラの管理問題が深刻化しています。例えば、ある中山間地域においては、農業用水が貯水槽から給水槽へ自動でポンプで汲み上げられ利用されていますが、何らかのトラブルが発生した際、利用者は水槽が枯渇するまで気付くことができない状況にありました。水槽の水位低下時には警告ブザーが鳴りますが、貯水槽、給水槽ともに民家から離れていることや、各水槽が急な斜面に面していることから、特に高齢者が確認するには困難な状況が続いていました。

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そこで、福本教授、松本 貴也客員研究員(合同会社Office asoT代表)らの研究グループは、IoT(※1)技術と従来よりも低い周波数帯のLPWA(※2)を用いて各水槽の水位を常時監視し、離れた場所でも渇水の危険がある時には、LINEやメールでリアルタイムに通知する水位通知システムを開発しました。

具体的には、ソーラーパネルとバッテリー、水位センサーを組み合わせたLPWA送信機を製作し、電源のない給水槽でも水位データを送信することが可能となりました。また、各水槽からの通信は3GやLTE回線を使わない構成をとっているため通信費が不要です。特に、電波の回折性に優れた429MHz帯のLPWAを用いることで、消費電力を抑えつつ長距離通信での安定性を確保しました。

これにより、電源供給が困難な中山間地域等の場所において、梅雨の時期など曇天が続く場合も長期稼働できる点や、渇水間近になるとLINEやメールで通知されることで水位の状況に合わせた対応が行えるようになった点など、利用者にとって負担を軽減できる水位通知システムの実現に一歩近づきました。

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(実証実験中のシステム)

今後は、電源供給が難しい場所や遠隔地の水位管理について、同様の課題を抱えている水田の水位監視についても実証実験を行い、本システムの有用性を確かめる予定です。また、センサーを変更することで離れた場所の水位だけでなく鳥獣害の被害や罠の状況、土砂崩れや濁水等といった様々な状況の遠隔監視や通知が可能となります。

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(左:福本 昌弘教授、右:松本 貴也客員研究員)

福本教授および松本客員研究員は「農家の方から水位の見回りに4割の時間を費やしているという相談を受けシステムの開発に着手し、約1年で実証実験までこぎつけることができました。日頃、LPWA 429MHz帯を何かに使用できないかと考えていましたので、今回の低コストで障害物を回り込んで隅々まで届く通信が必要という状況にマッチすると思い、提案しました。急斜面での送受信機設置や通知時刻の同期等、様々な苦労がありましたが、自分たちの技術を用いて、地域の課題解決に貢献できたことは大変嬉しく思います。他の分野にも展開できるシステムなので、これから様々なニーズに合わせてシステムを改良し、新しいことに挑戦していきたいです」と語りました。

なお、この実証実験は、内閣府地方大学・地域産業創生交付金「"IoP(Internet of Plants)"が導く『Next次世代型施設園芸農業』への進化」の助成を受けたものです。

※1 IoT(Internet of Things):モノのインターネット。様々なモノ(物)がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み。

※2 LPWA(Low Power Wide Area):長距離の通信を低消費電力で実現できる無線通信技術の総称。

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