2021.10.22学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

古沢 浩教授の研究論文が英国王立化学会学術誌「Soft Matter」に掲載、inside front coverに採用されました

環境理工学群古沢 浩教授の研究論文が、10月21日発行の英国王立化学会学術誌「Soft Matter」(2021年17巻39号)に掲載され、ハイライト論文として表紙(inside front cover)に採用されました。

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掲載された論文のタイトルは「Non-hyperuniform metastable states around a disordered hyperuniform state of densely packed spheres: stochastic density functional theory at strong coupling(無秩序な準安定状態の球体密充填系における超均一性の破れ:確率的密度汎関数法の強結合近似)」です。
表紙の青円柱光線は超均一性を象徴しています。超均一な物質の透明性と構造因子S(k)の線形性(S(k)~k)の両メッセージを、絵で表現しています。

超均一性とは、空間分布が均一でない無秩序で乱雑な分布においても、システム全体としては均一になる性質のことを示しています。
2003年にプリンストン大学のTorquato教授らが、主には数理的観点から点集合の乱雑分布に関してこの性質の存在を提唱しました。その後、20年近くに及ぶ膨大な研究の結果、細胞組織、エマルジョン※1から電磁波吸収性(ステルス性)光学材料に至る様々な実在の物質群、さらには宇宙空間において超均一性が見出されることがわかってきました。 超均一性があると、無秩序に充填された物体においても透明で光を通すという性質が生じます。例えば、超均一性マヨネーズが作製できれば、味は濃厚なままだが見かけは透明なマヨネーズが食卓に並ぶこととなります。また、超均一性により実現される非結晶の光学的透明性・力学的等方性物質は、特にはステルス性材料という観点から材料科学的にも注目されています。

本論文では、超均一な振る舞いを示しつつも完璧には超均一にならない(すなわち、透明な無秩序状態とはなりきらない)ことがなぜ起きるのか。なぜ、完璧な超均一性の実現が難しいケースがあるのか。本当にコンピュータ内を含むリアルなシステムにおいて超均一性は存在するのか。という近年の論争に対して、理論的に応えようとしています。特に、コンピュータ内で作ったガラス状態※2(無秩序に球体が密充填されたシステム)に着目し、コンピュータ上のガラスにおいてこれまで報告されている超均一性の破れについて、定量的に説明できる理論を構成しました。なお、密充填して動けない状態においても、確率的に球の再配置が起きる効果を考慮できる理論手法を開発したことが本論文のポイントです。

本論文はオープンアクセスとなっており、こちらから確認できます。

※1 分散質・分散媒が共に液体である分散系溶液のこと。身近な例としてはマヨネーズ木工用接着剤アクリル絵具などが挙げられる。

※2 日常生活で目にする窓ガラスだけでなく、結晶のような規則正しい構造をとらないまま流動しなくなった固体状態全般のことをさす。

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