2022.3. 9在学生・保護者 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

坂本ひかるさんらが金属有機構造体のナノ構造制御と光物性への影響を明らかにし、英国学術論文誌の表紙を飾りました

博士後期課程 基盤工学コース2年の坂本 ひかるさん(指導教員:機能性ナノマテリアル研究室 大谷 政孝准教授)の研究論文がRoyal Society of Chemistry(イギリス王立化学会)のMaterials Advancesに掲載され、Front Coverとして採用されました。

cover_sakamoto1.jpeg

本論文では、色素包摂された金属有機構造体(metal-organic framework: MOF)のナノ構造制御と光物性に与える影響を報告しました。
金属イオンと有機配位子の三次元的な自己集合によって得られるMOFは、結晶構造内に、規則的・周期的なナノ空間を有することから、ゼオライトに匹敵する高い比表面積と低い密度をもっています。これまでMOF研究においては、新たなMOF結晶の創出とその物理的/化学的性質の解明が主流であり、MOFの精密な外形・サイズ制御に関する研究は未発展でした。

図1.jpeg
(図1 結晶サイズの異なるZIF結晶のSEM像と写真(a, b: 1 µm, c, d: 10 nm))

そこで坂本さんらの研究グループは、ゼオライト様トポロジーを有し、亜鉛イオンとイミダゾール系配因子から形成されるZIF(Zeolitic Imidazolate Framework)をもちいて、ナノからマイクロメートルスケールの精密な空間構造制御法の確立をめざしました。精密な空間制御には、ZIF-8結晶の核生成・結晶成長が重要となります。そこで、成長速度に影響を及ぼす成長環境、温度、配位子の三因子に着目し、系統的に合成条件を検討した結果、MOFの結晶構造を保持したまま約10㎚から1㎛のサイズ制御に成功しました(図1)。また、MOFをホストとして発光性色素を包摂したMOFでは、結晶のナノサイズ化と共にその発光強度・効率が増強されることを初めて示しました。

坂本さんは「論文誌の表紙を初めて飾ることができとても嬉しいです。熱心に研究をサポートしてくださった大谷先生に恩返しできました。次の私の挑戦は、本学にある最新の電界放射型透過電子顕微鏡を使って、汎用的なMOFの局所構造観察が可能な手法を確立することです」と喜びと今後の抱負を語りました。

★8B0A4339.jpg


論文タイトル:Impact of nanosizing a host matrix based on a metal-organic framework on solid-state fluorescence emission and energy transfer(金属有機構造体のナノサイズ化が包摂色素の光物性に与える影響)

論文著者 :博士後期課程 基盤工学コース2年 坂本 ひかる
      環境理工学群 准教授 大谷 政孝
      環境理工学群 講師 伊藤 亮孝

論文>>>

表紙ページ>>>

RELATED POST

関連記事