2022.3.30在学生・保護者 / 地域・一般 / 学生生活 / 学群・大学院 / 研究

田中 知成さんが自動車技術協会の大学院研究奨励賞を受賞

田中 知成さん(大学院修士課程 電子・光工学コース修了)が自動車技術協会の大学院研究奨励賞を受賞しました。
本賞は、大学院生の学業の向上発展に資することを目的に設けられたもので、自動車に関連した技術分野において、大学院で優れた研究を行った大学院修了予定者を表彰するものです。

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田中さんの研究テーマは「仮想環境を用いたSRAMFPGAにおけるソフトエラー評価手法」です。

近年、半導体製造プロセスの微細化によって集積度が高くなったことから、電子デバイスでソフトエラーの発生が懸念されるようになりました。ソフトエラーは宇宙放射線が原因で半導体デバイスの記憶素子のデータが破壊される現象であり、電子システムの予期せぬ誤動作を引き起こすため、特に人命保護の役割も担う高レベルの自動運転システムでは極めて大きな脅威となります。

自動運転システムには高い計算性能が求められるため、SRAM(Static Random Access Memory)型FPGA (Field Programmable Gate Array)を用いた高効率な実装が期待されていますが、回路の構成情報を格納するコンフィギュレーションメモリが放射線に対して脆弱であることが大きな課題となっています。そこで本研究では、SRAM型FPGAに実装した自動運転システムを対象として、ソフトエラーの評価を行いました。ソフトエラーによって引き起こされる自動運転システムの誤動作を観測し、そのメカニズムを解明することを目的としています。

具体的には、まず、自動運転システムを実装した実環境のFPGAでソフトエラーが発生した際に引き起こされる誤動作を、仮想環境上を走行するロボットカーで評価する手法を提案しました。続いて、深刻な誤動作を評価するためのソフトエラーの観測方法を提案し、ソフトエラー評価実験として、意図的にコンフィギュレーションメモリのビットを反転させるエラー挿入実験と、中性子ビームをFPGAに当てることでソフトエラーの発生を加速させる照射実験を行いました。エラー挿入実験と照射実験の結果が誤差範囲内で一致することを示し、提案評価手法の有用性を実証しました。

本研究成果は、IEEE発行の核科学に関するトップジャーナル「IEEE Transaction on Nuclear Science」に掲載されました。また、令和4年3月に開催された組込み技術とネットワークに関するワークショップETNET2022において高い評価を得て、SLDM研究会セッション特別賞を受賞しました。

受賞を受け、田中さんは「研究内容が評価され大変嬉しく思います。ご指導いただきました密山 幸男教授(システム工学群)、東京大学の廖 望特任研究員(昨年9月まで本学システム工学群助教)、京都大学の橋本 昌宜教授に心より感謝申し上げます。一から研究体制を構築することは思った以上に険しい道でしたがやり遂げることができました。中性子の照射実験は国内で実施できる場所が限られており、時間的な制約もある状況下でデータを取得できるよう難易度の高い準備行いました。大学生活で培った経験をいかして、難しいことでも諦めずにやり遂げる社会人になりたいです」と喜びと抱負を語ってくれました。

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