2022.9. 5地域貢献 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

大内 雅博教授が脱炭素につながる研究開発を支援する「カーボンリサイクルファンド助成金」に採択されました

システム工学群の大内 雅博教授(兼 総合研究所持続社会建設材料研究室長)が、一般社団法人カーボンリサイクルファンドの「カーボンリサイクルファンド助成金」に採択されました。

この助成金は、社会的課題を解決するため、CO2あるいは炭素原子や炭素を含む材料)を資源として利用するカーボンリサイクル及び関連技術、並びにカーボンリサイクルを実現するための社会科学や制度設計等の分野に関する研究や気候変動対応に資する技術に対して助成・支援するものです。
今年度は一般公募枠55に対し14件が採択となり、中四国の研究機関では唯一、本学が採択されました。

大内教授が採択された研究課題は「木灰を用いたバイオマスコンクリートの実用強度化」です。

現在のコンクリートはセメントや骨材(いわゆる砂、砂利)などの供給量が有限な鉱物由来資源から成っており、使用後に自然エネルギーでは分解せず、物質循環の行き止まりとなっています。この問題に対する解として、大内教授は、木質バイオマス発電から生じる副産物の、特性の異なる3種類の木灰(主灰、リドリング灰、飛灰)の混合物を水と練混ぜて常温常圧下の大気中で硬化する「木灰コンクリート」を開発しました。木灰コンクリートは、現生植物由来の材料のみを用い、水と混ぜることにより硬化する材料であることから、自然エネルギーにより物質循環する「バイオマスコンクリート」と呼ぶことが出来ます。

CRF1.jpg

本研究の目的は、現時点で最高でも2MPa程度に留まっている材齢28日における木灰コンクリートの圧縮強度を、実用的な建設用コンクリート材料として必要な20MPa以上に高めることです。

本研究の直接効果は、木灰コンクリートの炭酸硬化反応の促進による二酸化炭素吸収量の増大です。これにより生成量が増す炭酸カルシウムは、現在でも肥料(土壌中和剤)としても利用されているため、木灰コンクリートとしての使用後にも活用可能です。

一方、間接効果は、木質バイオマス発電の副産物である木灰コンクリートを活用した、間伐も含めた作業効率化による林業の振興です。木灰コンクリートを用いたブロックにより森林作業道を舗装すれば、林業の作業の効率が向上すると共に、樹木の生育に役立ちます。さらに、その舗装ブロックは寿命が来て役目を終えれば、自然エネルギーにより肥料として土に還るため、廃棄の手間も場所も必要とせず、森林という閉じた系内での物質循環が可能です。本研究により、林業振興ひいては有力な再生可能エネルギーである木質バイオマス発電の拡大への多大な貢献が期待されます。

CRF2.jpg

採択を受けて大内教授は「現在のコンクリートは、セメントなどの鉱物由来資源から作られています。私の所属するコンクリート研究室では、文明と地球環境の両立を目標として、コンクリートの常識を覆す、植物由来の材料のみで作られたコンクリートの研究を行っています。本研究は、森林資源が豊富な高知県だからこそできる研究です。木を植えることで将来的にそれがコンクリートになる、考えるだけでワクワクしますよね。このような胸の高鳴りを大切にしながら持続可能な社会を実現するため研究に邁進していきます」と意気込みを語りました。

★1E7A4303.jpg

一般社団法人カーボンリサイクルファンドの詳細はこちらから

大内教授の最先端研究紹介「自己充填コンクリートが進化を遂げて汎用化間近。コンクリート技術の新時代へ」はこちらから

RELATED POST

関連記事