2023.2.20地域・一般 / 地域貢献 / 研究 / 研究者・企業

朴 啓彰客員教授らの研究グループの論文が「Scientific Reports」に掲載されました

2022年12月12日、本学の朴 啓彰客員教授(地域連携機構 地域交通医学・社会脳研究室長 兼 高知検診クリニック脳ドックセンター長)、弘前大学の大庭 輝准教授、岩手医科大学の山下 典生准教授、大阪大学の佐藤 眞一教授らの研究グループの論文が、ネイチャースプリンガーが発行するオープンアクセスの学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

掲載された論文のタイトルは「Parietal and occipital leukoaraiosis due to cerebral ischaemic lesions decrease the driving safety performance of healthy older adults(臨床では無症候性と扱われている軽度の白質病変でも、頭頂葉や後頭葉にあれば、健常高齢者の安全運転能力を下げる可能性がある)」です。

朴先生論文図.jpg 朴先生写真.jpg
(写真右:朴 啓彰客員教授)

朴客員教授は、脳ドックという日本独自の予防医学から創出される健常脳のビックデータから「交通脳データベース」という新たな概念を提起し、健康長寿と運転寿命を共に延ばして、ウルトラ高齢社会※を活性化する研究を行っています。この交通脳データベースから、他国の追随を許さない日本独自の研究成果が期待されています。

健常脳において高頻度で診断される白質病変(脳虚血病変)が、健常高齢者の安全運転行動に影響することは既に報告されています。本研究では、白質病変が運転行動に悪影響する脳葉(前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉)をMRI検査により初めて特定する(4つの脳葉のうち頭頂葉と後頭葉である)ことができました。遂行機能に関与すると言われている前頭葉は実は関係しておらず、視覚領野のある後頭葉と空間認知力に関与する頭頂葉が関係していたという結果が得られました。特に、後頭葉の白質病変は自動車教習所で実施されている運転適性検査で簡単に調べられる動体認知機能と関係していることが判明しました。
白質病変は、脳ドックなどで事前に診断がつくため、脳の健康チェックと同時に高齢者の危険運転行動を事前に診断できる可能性が示唆されました。

今後の展開として、MRI検査で白質病変がどの部位に存在するかが分かると、危険運転をする高齢ドライバーを事前にMRI識別できる可能性が考えられます。さらに、別の加齢脳現象である脳萎縮もMRI検査で定量評価して、白質病変で得られた知見と合わせると、危険運転をする高齢ドライバーの識別率を高めることができます。現行の脳ドックは、未破裂脳動脈瘤や無症候性脳腫瘍の診断に特化した予防医学になっています。現行の脳ドックに加えて、MRI検査で白質病変や脳萎縮を定量評価し、白質病変では関連する脳葉が特定されることで、交通事故を起こしやすい高齢ドライバーを事前に同定することが可能になります。将来的には脳健康ケアのみならず、脳ドックによるリスクマネジメントの確立につながると考えられます。
朴客員教授は、高齢化先進県である高知県においてこそ、その研究成果を成就したいと願っています。

本学では、持続的な地域貢献をめざしており、多彩な分野の先端研究を地域に生かし、社会の課題を解決すべく日夜研究を重ねています。

論文はオープンアクセスとなっており、こちらからご覧いただけます。

※ウルトラ高齢社会:65歳以上の高齢者が占める割合-高齢化率-が28%を超えると、ウルトラ高齢社会と定義されることがある。昨年の日本は29.1%になり、28%を優に超えている。

RELATED POST

関連記事