2023.9.28地域・一般 / 地域貢献 / 研究 / 研究者・企業

「これからの里山暮らしを考える」里山工学シンポジウムを開催しました

9月16日、地域連携機構主催の里山工学シンポジウム「これからの里山暮らしを考える」を開催し、126名の方々にご参加いただきました。また、会場ロビーでは前田 博史さんの写真を展示、あたかも自然の中に身を置いているかのような写真の数々に、来場者はゆったりとした時間を過ごしていました。

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(写真左:前田 博史さん)

里山工学とは、歴史文化を背景に、科学的な知見に基づき、流域圏における自然と暮らしのつながりを追求する学問です。

基調講演では、天然写真家の前田 博史さんが「四国のブナ林」、哺乳動物研究家の谷地森 秀二さんが「人と獣たち、共存にむけて」、翻訳家・文筆家の服部 雄一郎さんが「里山から生まれるサステナブル、リジェネラティブ」をテーマに、それぞれが自然の美しさ・大切さ・強さ・ポテンシャルについて、里山ならではのエピソードをユーモアも交えながら紹介、参加者は巧みな話術に引き込まれていました。

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(写真1枚目:谷地森 秀二さん/写真2枚目:服部 雄一郎さん)

続いて、地域連携機構の高木 方隆教授からは、里山工学の現状と今後について話題提供しました。

「高木さん、山崩れて危ないけど、新しい植物がやってくる。だから、植物にとって自然現象は必要なんだよ」
GIS(地理情報システム)を使った有用植物の適地性に関する調査に協力してもらっていた、牧野植物園のレジェンド稲垣 典年先生のこの言葉をきっかけに里山工学に火がついた高木教授。2016年に「里山工学」を立ち上げ、香美キャンパスからほど近い土佐山田町佐岡地区を里山生活圏ととらえ、実証フィールドを設置。野鳥研究家、草木染作家など幅広い分野の研究者が集まり、自然環境観測、歴史民俗調査、家屋やインフラの改修などの社会実装に取り組んできたことを報告しました。

里山工学の目標は、流域圏での生活自給率が5割以上で生物多様性も維持される土地利用の確立、自給できない部分を一次産業と持続可能な二次産業で補うこと、そして里山の地域文化の発展により里山暮らしの人の割合が全人口の3割以上になることだと語りました。また、本当に価値のあるものはお金で買えないとしたうえで、自然と社会を学ぶことで感受性を高めて未来予測できる力や、環境に応じた質の高い暮らしなどが地域文化につながることを紹介、今後も、地域の皆様や関係者の方にご協力をいただきながら、里山工学を通して地域文化の発展に貢献してきたいと述べました。

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ディスカッションでは、冒頭に牧野植物園の稲垣先生が「里山は20年~25年サイクルで草木を切った山のことで、人の利用した場所を言います。1960年代のエネルギー革命で電気やガスができたため、山の草木を切ることはなくなり、当時500あった草木の種類が今は50種類に減ってしまった。何千年と人間が関わってきた里山のサイクルを維持していくことが大切、このシンポジウムを機会につながっていけば」とコメント、その他にも来場者から「地域の知恵を活かすようなことができければ」「仁淀川流域では砂防ダムの影響で川の水が減り、自然の生産性を落としている。物部川地区はどのような状況か?」「里山の整備は人間が手を入れ続ける必要がある。そのためには、経済的な価値を創出するシステムづくりや、里山でのネットワークの再構築が必要」などの意見がだされ、持続的な里山の運営について活発な議論が行われました。

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参加者からは、「自然災害や動物による農作物への被害など、人間にとって都合の悪いことは排除する社会になっている。自然について考え直す良い機会になった。ほっこりと暖かい気持ちになった」「服部さんのリジェネラティブ農業の話に感銘を受けた」「里山工学は必要だと感じた。田舎で暮らしたい人たちのために、子どもや高齢者が暮らしやすい拠点をつくるといった取り組みが必要」といった感想が寄せられました。

明るい未来の里山は、自然・歴史などの地域環境を最大限に生かすべく、人々が学び、協働によって整備し、その恵みを享受できてこそ成立します。継続した活動には、地域の方々との連携やご意見を伺うことが極めて重要だと考え、今後もシンポジウムを実施していきます。

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