2023.8. 1在学生・保護者 / 学生生活 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

久世 陸さんがThe 11th International Fission Yeast MeetingでPoster Prizeを受賞

5月28日~6月2日、JMSアステールプラザ(広島県)で開催されたThe 11th International Fission Yeast Meeting(第11回分裂酵母国際会議)において、久世 陸さん(大学院博士後期課程 基盤工学コース 2年・兵庫県立西宮高等学校出身)がPoster Prizeを受賞しました。

2年に1度開催される同学会は、分裂酵母研究者にとって世界最高峰の国際学会であり、世界各国から309名が参加しました。その中で行われたポスター発表152件のうち、優れた研究発表として審査員投票で選出された8件にPoster Prizeが贈られました。
同賞の表彰式では、細胞周期研究の世界的権威であるPaul Nurse博士(2001年ノーベル生理学・医学賞受賞)から、自筆のサイン入り表彰状を手渡されました。

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                          (サイン入りの表彰状と副賞のけん玉)

今回、久世さんが発表したテーマは、「A universal cellular response to acute aneuploidy that leads to chromosome rearrangements(染色体再編成を引き起こす急性の染色体異数性に対する普遍的な細胞応答)」です。

遺伝情報の本質として知られるDNA分子は、核内に存在し、高度に凝集することで染色体という構造を形成しています。染色体は、その数が生物種によって厳密に規定されており、生物の生命活動には安定的な染色体数の維持が必要不可欠と言えます。染色体には、このような遺伝情報の担い手として重要な完全性・堅牢性がある一方で、染色体同士が融合・分裂したりすることでその構造を変化させる柔軟性を兼ね備えていることが知られています。このような染色体構造の変化は、「染色体再編成」と呼ばれ、生物の進化にも関わっていると考えられています。久世さんは、このような染色体再編成のメカニズムを解明するため、本研究を始めました。

久世さんの所属する染色体機能制御学研究室(指導教員:石井 浩二郎教授)では、分裂酵母を用いて人為的に染色体再編成を引き起こすことができる実験系が樹立されています。久世さんは、この実験系を用いて、染色体再編成メカニズムの解明を試みました。解析の結果、染色体再編成に核内の染色体数の変化が重要である可能性が示唆されました。染色体異数性と呼ばれるこの染色体数の変化は、染色体分配の失敗などにより生じ、多くの場合、細胞に悪影響を及ぼします。ヒトにおけるがん細胞は、その典型例と言えます。染色体異数性に対する細胞の応答をさらに深く解析した結果、染色体異数性に対して、ミトコンドリアが素早く応答していることが明らかになりました。このような結果から、久世さんは、『染色体異数性という細胞にとって危機的な状況に対して、核(とその内部にある染色体)とミトコンドリアが協調的に働くことで染色体再編成が引き起こされる』という仮説を立て、現在も研究を進めています。

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受賞を受け、久世さんは「初めて参加した国際会議でこのような賞に選出していただき、大変光栄です。尊敬する研究者の1人であるPaul Nurse博士に表彰状を手渡していただいた瞬間、改めて研究を続けてきてよかったと感じました。今後もこの研究をより深めていき、インパクトのある学術論文として発表できるよう頑張りたいと思います。」と語りました。

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