2023.8. 9在学生・保護者 / 学生生活 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

林准教授、松尾助教、中林さんの研究グループが、二次元結晶中の超分子ポリマー配列が異方的な光輸送機能を実現

理工学群の林 正太郎准教授松尾 匠助教、中林 真宏さん(大学院博士後期課程基盤工学コース1年・香川県立善通寺第一高等学校出身)の研究グループは、分子を一次元に配列させた超分子ポリマーを二次元結晶中に一方向に配列させることに成功、従来の結晶では起こらない異方的光輸送機能の発現を示しました。

小型で高効率な光通信システムを回路化するためには、光を特定の方向にのみ輸送させるアクティブ型光導波路の開発が重要です。しかし、発光が物質に閉じ込められて光輸送(導波)する際は、等方的な拡散が起こるため、一方向に光を輸送することはできませんでした。

図2.png

(本研究で作製した結晶と光機能測定のイメージ図)

そこで、本研究グループは、結晶構造を最適化することにより二方向の光輸送機能が大きく異なるアクティブ型異方性光導波路を実現することができるのではないかと考え、分子設計をはじめ、合成、結晶化、構造解析および光機能調査を行いました。2つのピリジンを有する発光性分子と2つのヨードを有する架橋分子を共晶化することにより、二次元のプレート型結晶を作製しました。構造解析の結果、発光性分子と架橋分子は結晶中で一方向に交互配列していることが明らかとなりました。

また、発光性分子の一次元配列の実現により、二次元(プレート型)結晶において優れた異方性光導波路を実現することに成功しました。これまで報告された異方性導波路は減衰係数の比が約3.9倍(140 dB / cm 、540 dB / cm)であったのに対し、今回作製した結晶は40倍以上(52 dB / cm 、2111 dB / cm)であり、現在報告されている有機結晶において最も優れた値を示しました。

今回の研究では、二方向に対しての異方性導波路を実現するために結晶構造を制御するアプローチを選択しました。今後はこの手法を応用し、「任意の方向のみに優れた光導波を示す結晶」や「より優れた光輸送機能を有する結晶」の作製を行っていきます。

この成果は、2023年7月27日、Chemistry-A European Journal誌(Wiley-VCH)に掲載されました。

★8B0A5475.jpg

(左から林准教授、中林さん、松尾助教)

林准教授は「この成果は中林くんの2年間にわたる集大成です。何回にもわたる追試実験とディープなディスカッションで非常にまとめるのが大変でした。しかし、中林くんの努力と松尾先生の細やかなサポートで、最後は複雑なパズルが「カチっ!」と音を立てるように決まり、渾身の論文になりました」と最後までやり遂げた研究チームに頼もしさを感じていました。

【原論文情報】
タイトル:Non-covalent Supramolecular 1D Alternating Copolymer in Crystal toward 2D Anisotropic Photon Transport(2次元異方性光輸送に向けた結晶中における1次元交互配列型の非共有結合性超分子)

著者:Mahiro Nakabayashi, Takumi Matsuo, Shotaro Hayashi

掲載誌:Chemistry-A European Journal

掲載日:2023年7月27日

DOI:10.1002/chem.202302351

プレスリリースはこちらから

RELATED POST

関連記事