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山内 春花さん、林准教授らの研究グループが、長さ、種類、そして"かたち"が配列定義されたポリウレタンの合成に成功

理工学群の林 正太郎准教授、山内 春花さん(大学院修士課程化学コース 研究当時/2021年度修了)、稲山 舜也さん(大学院修士課程化学コース2年・岡山県立岡山一宮高等学校出身)、中林 真宏さん(大学院博士後期課程基盤工学コース1年・香川県立善通寺第一高等学校出身)の研究グループは、長さ、種類、そして"かたち"が配列定義されたポリウレタンの合成に成功し、"低環境負荷"な方法で高度データストレージの実現への可能性を示しました。

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ポリマーは長さが均一でなく、多くは構造が不明瞭なものです。それに対し、分子配列・構造が定義されたポリマー(SDPs: Sequence-Defined Polymers)は、暗号化と物理的な容積において高い性能を持つとされ、デジタルポリマーと呼ばれる情報記憶媒体技術への応用が期待されています。しかし、その合成は、非常に困難かつ環境負荷が大きい方法で行われてきました。

そこで、林准教授らの研究グループは、数多くの有機反応から、低環境負荷とかつ高効率性が期待される反応でありながら、繰り返しによってポリマーの成長が可能な方法を探索し、アルコールとイソシアナートの付加反応、アリルとチオールの付加反応を繰り返す高原子利用効率手法によってポリウレタン(SDPUs:Sequence-Defined Polyurethanes )の合成を実現しました。この合成プロセスには副生成物がなく、全く新しいSDPsの合成方法といえます。加えて、汎用性ポリマーであるポリウレタンの明確な構造と性質(熱、溶解性、自己集合性)を明らかにすることができました。さらに、ポリウレタンでは実現不可能だった繰り返し構造やかたち(トポロジー)の自在設計も可能であり、その構造定義が実現されました。日常的には柔らかなクッションやマスク等の材料に使われているポリマーですが、その本質を明らかにし、情報記憶媒体技術などへの新しい利用・展開方法を提示しました。

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今後は、ポリウレタン(SDPUs)の定義された配列を活かしたトポロジカルポリマー、ドラッグデリバリーシステム(DDS)のための分子カプセル、生体高分子の模倣や高強度材料に向けた超分子集合体、さらに分子構造による暗号化技術への展開に取り組みます。

この成果は、2023年9月2日、ACS Macro Letters(アメリカ化学会)に掲載されました。

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(写真1枚目:超高分解能飛行時間型質量分析装置を囲んで 左から中林さん、稲山さん、林准教授)(写真2枚目:山内さん)

林准教授は「本研究の道筋は高知工科大着任前から考えていましたが、想定される実験量の多さから優秀な学生でも全く太刀打ちできるものではないと考えていました。その折、筆頭著者である山内さんが研究室に入り挑戦してみたところ、あれよあれよという間に進んでいきました。実験量もデータ量も失敗量も桁違い!修士論文のボリュームは強烈なインパクトでした。それを更に論文にまとめることやデータの再取得(再現性)に勤しむ稲山くん、中林くんも本当にご苦労様でした。これで、高知工科大"産"ポリマーが席巻していく礎が築けました」と語りました。

【原論文情報】
タイトル:Systematic Order-Made Synthesis of Sequence-Defined Polyurethanes with Length, Types, and Topologies(長さ、種類、そして"かたち"を伴った配列定義ポリウレタンの体系的オーダーメイド合成)

著者:Haruka Yamauchi, Syunya Inayama, Mahiro Nakabayashi, Shotaro Hayashi

掲載誌:ACS Macro Letters

掲載日:2023年9月2日

DOI:10.1021/acsmacrolett.3c00469

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