2023.10.25地域・一般 / 地域貢献 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

栗原 徹教授がゆず農家の負担軽減を目的に四足歩行ロボットを活用した実証実験を行いました

10月11日、情報学群の栗原 徹教授が、高知県北川村のゆず農園で、自動化・省力化による農家の負担軽減を目的に、四足歩行ロボットを活用した実証実験を行いました。

高知県は、ゆずの国内生産量のうち約53%、収穫量約1万1,000トン(2019年農林水産省調べ)と日本一を誇っています。近年、ゆず等の果実の産出額は、優良品種への転換により年々増加傾向にある一方で、生産者の高齢化や栽培農家数の減少により、栽培面積や生産量は緩やかな減少傾向に向かっています。継続的に安定した果実栽培を行うためには、生産効率を高めるだけでなく、作業量を減らし、必要な労働人数や労働時間を削減することが必要です。

また、ゆず等の柑橘類の果樹は栽培上、隔年結果と呼ばれる豊作・不作の繰り返しを生じやすく、毎年の安定生産が農家にとって課題となっています。それを避けるため、適切な葉果比(=葉数/果実数)を調べ、摘果することが重要です。

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栗原教授と高知大学農林海洋科学部の濵田 和俊准教授は、時間と労力をかけずに画像から葉数を推定する方法の提案に2020年から取り組んできました。具体的には、LiDAR (※1) から得られる園地全体の点群データから各樹木の特徴量を算出し、葉数推定法を検討、さらに、園地全体の点群データから各樹木を分離する作業を自動化する、樹木分離法を検討してきました。

当日は、これまで人力で行っていた葉数推定のデータ収集を自動化・省力化するため、今後「果樹栽培技術革新のための1樹葉果比推定技術」のシステムを四足歩行ロボットSpot(※2)に搭載する予定とし、自律走行と人の追跡の2つの実証実験を行いました。

今後は、画像を用いて葉数と果実数を把握し、園地の樹木ごとに隔年結果指数を判定することで、樹木ごとの適正な葉果比を求め、最大収量での安定生産の実現、およびビッグデータによる園地管理手法の確立を目指します。

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(写真1枚目:人力でのデータ測定の様子/写真2枚目:自動樹木分離後のデータの一例)

栗原教授は「ゆずの葉果比は80~100:1が最適とされていますが、詳しく調査してみると従来考えられていた値より低くても隔年結果を起こしていない樹木もあり、標準的な指標だけでは測れないことも分かってきました。ゆずの安定生産を継続していくために、まずは、葉果比推定の誤差を2年で10%以内にすること、次に、北川村の全ての樹木の葉果比の経年的な変化をおさえクラウドで管理、園地の特徴を把握し、土壌改良や収量アップにつながる栽培支援の総合的なシステムをつくることが目標です。果樹の寿命は約20年あります。ビックデータ解析により土壌改良などで目指せる収量を明らかにし、効率的な栽培のモチベーションを高めることができればと考えています」と意気込みました。

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※1 LiDAR(Light Detection And Ranging)とは、レーザー光を用いて距離センシングと二次元または三次元の空間イメージングをレーザー画像から行う技術。
※2 Spotとは、Boston Dynamics社が製造する自律4足歩行ロボット。バッテリー電源で駆動し、反復的なタスクの自動化を可能にする自立プログラムを搭載。また、高度な制御アルゴリズムにより、バランスを取りながらの砂地や草地、階段の昇降、障害物の回避、不整地での歩行が可能。

本研究は、高知県の農業を飛躍的に発展させるための産学官連携プロジェクト『IoP(Internet of Plants)が導く、「Society5.0型農業」への進化』(IoPプロジェクト)の『需要・価格変動の大きい農産品の出荷量・時期予測』の中で実施しました。

最先端研究「ICT技術で農業をアップデート 深層学習による画像認識技術の進化系」の紹介はこちらから

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