2023.12.22在学生・保護者 / 学生生活 / 学群・大学院 / 研究

学生3名が応用物理学会中国四国支部学術講演会発表奨励賞を受賞 

7月29日に島根大学(松江キャンパス)で開催された「2023年度 応用物理・物理系学会 中国四国支部 合同学術講演会において、このたび学生3名が発表奨励賞を受賞しました。

本賞は、支部学術講演会において、応用物理学の発展に貢献しうる優秀な講演を行った若手研究者に対し授与されます。2023年度は66件の発表の中から12名が受賞しました。

古賀 清河さん(大学院修士課程航空宇宙工学コース 2年・大分県立中津南高等学校出身・極限ナノプロセス研究室・指導教員:稲見 栄一准教授
発表テーマ「走査プローブ顕微鏡を用いたルチルTiO2(001)階段格子構造の解析

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光触媒とは、光が当たると化学反応が促進され、抗菌や殺菌などの清浄化作用が得られる材料です。現在、光触媒には酸化チタンが実用されていますが、紫外光でしか反応を起こせず、効率に限界がある点や光触媒として長期的かつ安定的に使用できないなど、いくつか課題を抱えています。これらの解決には、光触媒の表面構造と反応メカニズムの詳細な理解が重要です。本研究では、物質表面を超高解像度で観察できる走査プローブ顕微鏡を用いて、酸化チタン表面に現れる特異な階段格子構造をナノメートル~原子スケールで系統的に解析しました。その結果、階段格子構造が通常の酸化チタン表面とは異なる電荷状態を持つことを発見しました。この知見は、高効率の光触媒設計への指針となります。今後、本研究が発展すれば、紫外光に加えて可視光も利用し、光触媒反応を効率的に起こすことが可能となり、持続可能な環境清浄化技術の発展への貢献が期待されます。

受賞コメント:
初めての学会発表での受賞、嬉しく思います。また、応用物理学会という専門分野で評価され光栄です。普段、当たり前に見ている物でも、原子レベルでは変化している所に魅力を感じ、稲見先生と議論を深めながら研究に没頭してきました。大阪大学で試料処理した際には、様々な知識をもった方々と話す機会があり刺激を受けました。これからは、光触媒の効率を評価することに取り組みます。

古賀 直弥さん(大学院修士課程電子・光工学コース 2年・長崎県立長崎南高等学校出身・機能性薄膜工学研究室・指導教員:牧野 久雄教授
発表テーマ「Al積層AZO薄膜の真空中熱処理によるZnAl2O4界面層の形成とその効果」

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透明導電膜は、導電性を持ちながらも可視光を透過する薄膜で、太陽光パネルやスマートフォンのタッチパネルなど幅広い用途で使用されています。透明導電膜の主材料である酸化インジウム(ITO)は、資源枯渇や価格の高騰に懸念があり、近年、代替材料として比較的安価な酸化亜鉛(ZnO)が注目されています。しかし、ZnOはITOと比較して導電性の課題から、低抵抗化が必要とされています。これまでに古賀さんらは、アルミニウム(Al)極薄膜を堆積させたAl 添加 ZnO (AZO) 薄膜において、低抵抗と透明性を両立させる最適なAl積層膜の厚さが1.0ナノメートルであると示唆しています。本研究では、装置や成膜条件に依存しないAZO薄膜の低抵抗化をめざして、Al積層膜のAZO薄膜への影響と最適条件の決定因子の解明に取り組みました。その結果、最適条件はZnAl2O4の界面層が保護膜として充分に形成され、金属であるZnが残存しないAl積層膜の膜厚であることを報告しました。

受賞コメント:
研究成果が認められて誇りに思います。得意な数学と物理を活かして環境問題に取り組みたいと思い、資源枯渇が心配される半導体の研究に取り組んできました。考察がモデルとして確立された時はワクワクしました。今後は、電子移動を阻害する散乱因子は、粒内・粒界どちらが強く寄与しているのかをシミュレーション解析で明らかにし、さらなる酸化亜鉛の電気特性の向上に挑戦したいです。

川村 鮎人さん(大学院修士課程電子・光工学コース 1年・高知県立高知工業高等学校出身・機能性薄膜工学研究室・指導教員:牧野 久雄教授
発表テーマ「ガラス基板上ZnO多結晶膜の極性制御とピエゾ効果に関する研究

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ピエゾ効果とは、物質に圧力を加えた際に電荷が生じる現象です。低温で成膜が可能な酸化亜鉛(ZnO)においても、このピエゾ効果を用いたフレキシブルデバイスへの応用が検討されています。しかし、ピエゾ効果によって発生した分極は、自発分極と打ち消し合うという課題から、ZnO膜の極性制御が求められています。そこで川村さんらは、金属との界面の化学結合の性質を用いることで、ZnO膜の極性制御ができるのではないかと考え、ガラス基板上のZnO多結晶薄膜の極性制御とフレキシブルガラス上でのピエゾ効果の検証をしました。その結果、アルミニウムと金の下地層ではZn極性、金属の下地ではO極性のZnO膜を成膜、さらにフレキシブルガラス上で極性制御されたZnO膜では、曲げた際の応力による電気抵抗の増減が反転することを発見しました。これは、金属下地層による極性制御の有用性を示したと言えます。


受賞コメント:
このような栄えある賞をいただくことができ、光栄です。ご指導いただいた牧野先生、研究室のメンバーに心より感謝申し上げます。考察していた内容と同じ実験結果が得られた時は、研究の醍醐味を感じました。今後は、金属とZnの界面の結合の様子を確認し、極性制御とピエゾ効果を利用したフレキシブルデバイスを作製したいと思っています。

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