2024.6.21学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

英国学術論文誌の表紙に採用 谷口 彩乃さんらがハイエントロピー酸化物球状多孔体の低温合成法を開発

谷口 彩乃さん(博士後期課程2023年度修了)を筆頭著者とする研究論文が、Royal Society of Chemistry(イギリス王立化学会)のDalton Transactionsに掲載され、Front Coverに採用されました。

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「ハイエントロピー化合物」は5種類以上の元素が均等に近い比率で混ざりあった物質で、高い機械的特性や耐腐食性、優れた触媒能等を有するため、近年注目を集めている化合物です。

この化合物を得るためには、これまで、高温反応(約1000℃)を用いるのが通常でした。しかし、この手法では粒子の外形を制御することが難しく、また、粒子が肥大化し触媒能が低下するという問題がありました。本研究では、ソルボサーマル法(*1)により球状多孔体を得たのち500℃で低温処理するという二段階プロセスで、「ハイエントロピー酸化物球状多孔体(CoCrFeMnNi)3O4」を得ることに成功しました。これを逆水性ガスシフト反応(*2)の触媒に用いたところ、優れた触媒活性と長期にわたる安定性を示しました。

完成した新規合成手法は、新たなハイエントロピー化合物の創出につながるものと期待されます。


谷口 彩乃さんコメント
「小廣研究室での最後の研究テーマとなったハイエントロピー酸化物の論文が在学中に無事採択され、さらに筆頭著者としては初めてジャーナルの表紙を飾ることになり大変嬉しいです。ご助力くださった藤田 武志先生古田 寛先生と、何より7年以上にわたり研究室でご指導くださった小廣 和哉先生に感謝します。今年度から大学教員になり、主宰する研究室の学生と一緒にこの研究をさらに発展させていきたいです」

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(在籍中の谷口さん)

掲載論文

題 名:Low-temperature synthesis of porous high-entropy (CoCrFeMnNi)3O4 spheres and their application to the reverse water-gas shift reaction as catalysts(ハイエントロピー(CoCrFeMnNi)3O4球状多孔体の低温合成と逆水性ガスシフト反応触媒への応用)
著 者:谷口 彩乃(博士後期課程 基盤工学専攻 2023年度修了)
    藤田 武志 教授(理工学群)
    小廣 和哉 教授(理工学群)
論文掲載日:2024年3月27日

論文はこちらから

表紙ページはこちらから

【用語解説】

*1)ソルボサーマル法
 高温・高圧の有機溶媒を用いて物質を合成する方法

*2)逆水性ガスシフト反応
 二酸化炭素の再資源化反応の一つで、二酸化炭素を水素と反応させ、一酸化炭素に変換する反応

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