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圧縮センシングを用いた画像振動計測法を開発 ~車体やエンジンの実稼働高速振動の高精度可視化計測を実現~

従来、実稼働時の車体やエンジンのような高周波振動の可視化計測にはハイスピードカメラが用いられてきましたが、撮影速度を上げるほど解像度が低下するため、広範囲かつ微小な振動を計測することができませんでした。

この課題を解決するため、システム工学群 加藤 由幹講師、株式会社小野測器および株式会社構造計画研究所は、デジタル画像相関法(DIC)に「圧縮センシング(*1)」と「POD(モード分解手法の一種)」という二つのデータサイエンス技術を組み合わせた新手法、Compressed Sensing DICを開発しました(*2)。しかし、この方法は、振動試験において現れる単純な振動は計測できますが、エンジンの実稼働振動のように振動成分の数が多くなると計測が困難になるという課題がありました。

そこで、加藤講師らの研究グループは、回転計により計測した回転情報をもとに作成した回転次数基底による圧縮センシングを行う手法を開発しました。これにより、復元すべき変数をまばらにすることができ、実稼働エンジンのような複雑な振動を計測することができます。これまで計測できなかった広範囲(1㎡)・高周波(数百Hz)・微小振幅(数μm)の実稼働振動の全視野計測を可能としました。

図3.png
図 開発した手法によりエンジン吸気配管とボンネットの振動を計測した結果

今後は、開発した手法を拡張することで、構造物の固有振動数や固有モードの計測、数値計算モデルとの融合をめざしています。これにより、エンジンや車体、構造物の振動設計の更なる高度化が期待できます。

この成果は、2025年2月1日、Mechanical Systems and Signal Processingに掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

研究者コメント

「本研究成果により、今まで観測できなかった広範囲微小振動の全視野計測が可能となりました。機械設計の分野での活用が期待できる結果であり、大変嬉しく思います。今後は計測精度を向上させるとともに、本手法を用いて新しい振動現象の計測に着手したいと考えています」(加藤 由幹講師)

掲載論文

題 名:Full-field measurements of high-frequency micro-vibration under operational conditions using sub-Nyquist-rate 3D-DIC and compressed sensing with order analysis(次数解析と圧縮センシング,3D-DICを用いた実稼働高速微小振動の全視野計測)
著 者:Yuki Kato, Soma Watahiki, Masayoshi Otaka
掲載誌:Mechanical Systems and Signal Processing
掲載日:2025年2月1日
D O I :https://doi.org/10.1016/j.ymssp.2024.112179

用語解説

*1)圧縮センシング
  少数のデータからより複雑な情報を抽出するデータサイエンス技術です。特定の基底で変数が疎になる性質を利用した復元方法であり、MRI などの医療機器分野で用いられているほか、電波天文学の分野におけるブラックホールの可視化などでも実用化されています。

*2)参考文献はこちら
  Kato, Y., & Watahiki, S. (2023). Vibration mode identification method for structures using image correlation and compressed sensing. Mechanical Systems and Signal Processing, 199, 110495.
  https://doi.org/10.1016/j.ymssp.2023.110495
  https://www.kke.co.jp/release/14408

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