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篠森教授らの研究グループは2色覚者(色覚異常者)がもつ色の印象が一般色覚者と同じであることを解明しました

情報学群/総合研究所 視覚・感性統合重点研究室の篠森 敬三教授と小松 保奈美さん(大学院修士課程情報学コース 2019年3月修了)は、金沢工業大学情報フロンティア学部メディア情報学科の根岸 一平講師との共同研究により、2色覚者(色覚異常者)がもつ色の印象が一般色覚者と同じであることを科学的に解明しました。

これにより、商品デザインの全てを2色覚者向けの色に変更する必要性はあまりない一方、サイン等ではカラーユニバーサルデザインが重要であるとの観点から、様々な物の色デザインに応用されることが期待されます。

遺伝的な理由で2色覚者(色覚異常者)は、赤と緑の色の違いを識別できません。一方で、日常生活では、例え赤や緑が見えていないとしても、様々な色が表す意味を一般色覚者と同じ様に理解しています。これまで、色彩学においては2色覚では赤や緑の見えが全く無いか、非常に微弱であるものの、赤や緑の色の印象が一般色覚者と同じになる理由については明らかになっていませんでした。

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そこで、篠森教授らの研究グループは、2色覚者10名と一般色覚者9名の協力を得て2つの実験を行いました。「過激な」や「のどかな」などの抽象的な意味を表す9つの単語(意味語)に相応しい色を4秒程度で選ぶという篠森教授が開発した実験手法による実験1と、色を見せて35組の形容詞対からその印象を聞くという従来手法による実験2を組み合わせて、色の見え方と色の印象の関係を両方向から調べました(意味語空間の双方向性検証)。※実験結果データは2型2色覚者5名と一般色覚者5名で比較したものをお示ししています。

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実験の結果、意味語の印象に相応しい色を選ぶ(実験1)では、2型2色覚者は一般色覚者と異なり、赤や緑などの見えにくい色はあまり選ばず、黄色や白が選ばれました。一方、色を見せて色の印象を聞く(実験2)では、意味語の扱いも含めて両者にほとんど差がありませんでした。これにより、2型2色覚者は意味語をとおしても、やはり赤や緑が見えていないこと(色の見え方が赤緑方向、黄青方向の2次元ではなく、黄青方向の1次元で表現されていること)を示しました。一方で、色が赤や緑と理解するとその色に対する印象は、一般色覚者とほぼ同じであり、見え方ではなく過去の経験や学習から色への印象が形成されたことを示しました。つまり、2つの異なる色をじっくりと見た場合は、2色覚者にも一般色覚者と同様にそれぞれの色についての印象を伝えることが可能であり、逆に数秒程度(今回の実験では4秒程度)で判断する必要がある場合は理解が間に合わず、赤や緑の色が持つ意味(止まれや進め等)を形成できないことを解明しました(例えば、信号機の場合は、色ではなく点灯した場所や明るさで判断していると考えられます)。

今後の研究では、何歳ぐらいで同じ印象が形成されるのかを調べるため、若年層から高齢者で比較実験を行うことも必要となります。

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篠森教授は「色覚研究だけではなく、感性情報学の研究としても意味のある成果を導きだし、論文としてまとめることができ大変嬉しく思っています。錐体や網膜からはじまる視覚と、印象を聞くという感性の接続が必要だと気が付き、視覚・感性統合重点研究室として大学のご支援も頂きながら5年間この両者の統合的な研究に取り組んできました。今後は、AI(人口知能)も駆使した見え方と印象の予測研究にも取り組んでいきたいです」と語ってくれました。

本研究成果は、2020年3月19日米国光学会が刊行するJournal of the Optical Society of America, A に掲載されました。

プレスリリースはこちらから

【論文情報】
題名:Bidirectional relationships between semantic words and hues in color vision normal and
   deuteranopic observers
誌名:Journal of the Optical Society of America, A
著者:篠森敬三 (高知工科大学 )*,小松保奈美 (高知工科大学),根岸一平 (金沢工業大学)
   *連絡著者 (corresponding authors)

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