2022.7. 7地域・一般 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

島 弘教授が土木学会論文賞を受賞

システム工学群の島 弘教授が「令和3年度土木学会論文賞」を受賞し、6月10日に開催された令和4年度土木学会総会で表彰されました。

土木学会論文賞は、1920(大正9)年に始まり今日まで90年以上も継続する歴史と権威のある賞です。原則として、土木学会誌、土木学会論文集、その他土木学会の刊行物に研究、計画、設計、施工などに関する論文を発表し、独創的な業績をあげ、これが土木工学における学術・技術の進歩、発展に顕著な貢献をなしたと認められる論文の著者に授与されます。令和3年度は8件が選ばれました。

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受賞した論文の題目は「ハーフプレキャストRC構造の接合⾯における接合鉄筋のせん断⼒−ずれ変位関係」です。
プレキャストコンクリートとは工場で製造するコンクリートのことで、現場で打設するコンクリートに比べて品質管理が容易であり、完成直後の構造物が設計どおりの性能を保有することに対しての信頼性の向上や、施工の合理化による生産性の向上が期待されています。

本論⽂では、プレキャストと現場打ちコンクリートが⼀体となって外⼒に抵抗するハーフプレキャストRC構造の接合⾯を対象として、その接合⾯をまたぐ接合鉄筋のせん断挙動を実験により明らかにしました。また、その挙動に基づいた⼒学モデルの構築とせん断⼒−ずれ変位関係の算定⽅法、実験回帰に基づいた簡便な関係式を提案しました。
提案された⼿法は、接合鉄筋の変形形状を円弧と仮定し、付着機構に基づく鉄筋抜出しモデルなど既往の複数の⼒学モデルを組合せた簡便な⼿法であるうえ、プレキャスト構造物全体の挙動評価における接合部破壊への適⽤を前提として、接合鉄筋の破断に⾄るまでを適⽤範囲としており、設計・照査に対する有⽤性が⾼いものです。
本研究ではハーフプレキャストRC構造を対象としていますが、汎用性によって、例えば、引張⼒とせん断⼒を受ける、あと施⼯アンカーへの適⽤など、プレキャスト構造への適⽤だけに留まらない発展性を有しています。

このように、コンクリート工事の生産性向上に向け、プレキャストコンクリートの利用拡大が進むなか、研究課題の設定が明確かつ時宜を得ており、新規性、完成度も高く、今後の発展性が期待できることから、論文賞が授与されました。

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島教授は、「栄えある賞をいただき大変光栄です。博士論文で、この研究の基礎となる鉄筋とコンクリートの付着の研究を始めました。約30年の時を経て、目標の一つであった土木学会論文賞を受賞することができとても嬉しく思います。恩師の岡村甫先生(高知工科大学二代目学長)からは学生時代に『一つはライフワークとなる研究をもちなさい』とアドバイスいただいたことが今でも心に残っています。土木の分野では鉄筋やコンクリートの研究が主流で、付着機構をテーマとしたものは多くはありませんが、継続して研究に取り組んだことで、コンクリートの付着機構の第一人者になれたのではないかと自負しております。今後は、耐震設計法の精度をあげて一般でも利用できるような提案を行い、社会に貢献したいです」と受賞の喜びと抱負を語りました。

【受賞論文】
論文題目:ハーフプレキャストRC構造の接合面における接合鉄筋のせん断力-ずれ変位関係
掲載誌名:⼟⽊学会論⽂集E2(材料・コンクリート構造) 77巻,1号,pp.1-14,2021
著者:
秋田大学 ⾼橋 良輔准教授
高知工科大学 島 弘教授
ランデス株式会社 松岡 智氏
株式会社コムスエンジニアリング ⼟屋 智史氏

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