2023.7. 6学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

村井 亮介助教が日本測量協会の測量・地理空間情報技術奨励賞を受賞

地域連携機構の村井 亮介助教が、公益社団法人日本測量協会の「測量・地理空間情報技術奨励賞」を受賞し、6月22日に東京ドームホテルで開催された受賞式に出席しました。
同賞は、直近3年以内に学会誌等に掲載された測量・地理空間情報技術に関する論文および技術報告を執筆した少壮気鋭の研究者や技術者に送られるものです。

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村井助教は、国土情報処理工学研究室高木 方隆教授)で、国土の資源を有効利用するための観測技術の研究をしています。現在は、「植生」に観測の対象を絞り、より正確で緻密な観測データの取得を目指しています。

今回受賞となったのは、村井助教が執筆した「UAV画像における植生観測のためのカゲ補正手法」、「UAVに搭載したデジタルカメラによるRGB値を用いた植生のフェノロジー観測手法」および「UAVを用いたBRFを考慮したオルソ画像生成手法」の3本の論文です。

植生のフェノロジー観測(生物季節観測)は、植物の状態が季節によって変化する現象を観測することをいい、現地踏査による目視で確認する手法が一般的です。しかし、一度に広範囲の観測が困難であることや観測者の主観により結果が左右されることが課題としてあります。これらの課題を解決するため、UAV(Unmanned Aerial Vehicles:通称ドローン)による低高度リモートセンシングという手法に期待が寄せられています。

村井助教は、UAVによる植生観測の実用性を検証する中で、日向と日影で明度が異なるため、取得データに大きく影響を与えることに着目し、カゲ補正手法の開発を行いました。太陽の直達光に照らされている地点と雲や青空の散乱光に照らされている地点を分離し、それぞれの光源に応じた補正手法を使い分けることで、明度による植生のフェノロジー観測を実現しました。

さらに、明度に比べてより色の変化を捉えやすく、開花や紅葉など植物の季節的な変化が観測しやすいRGB値による植生のフェノロジー観測手法の構築のため、光源が雲の散乱光に限られる雲量9以上の曇りの日の植生観測データだけを用いて、8bit画像におけるRGBのDN(Digital Number)値によるフェノロジー解析を行いました。
散乱光による明度と天空率の関係によって生じる明度濃淡は、天空率を用いた明度校正によって校正し、また、シーン間における光源の違いは、RGB値を用いたバンド間演算により正規化することで解消しました。解析結果は、±0.025程度の振れ幅の精度であり、本手法により、UAVに搭載したデジタルカメラから取得したRGB値を用いた単木単位でのフェノロジー観測が可能となりました。

また、従来のオルソ画像は太陽位置と観測角が不均一であるため、正確なRGB値を取得するには観測角の均一化が課題でした。観測後のSfM(Structure from Motion)処理により得られるカメラ情報を用い、原画像ごとのDNと位相角度を各ピクセルにスタックさせた解析用データを作成することで、面的にBRF(bi-directional reflectance distribution factor)を算出し、その解析結果を用いてBRFを考慮した新しいオルソ画像の生成手法を確立しました。これは、すべてのピクセルで任意の位相角が均一なオルソ画像を生成できる手法であり、従来のオルソ画像よりも観測値の精度が高いものになります。

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 (オルソ画像の比較 左:里山 右:河原)

3本の論文に共通して、UAV画像を用いて植生観測を行う際の補正手法についての貴重な研究成果である点が評価され、受賞の運びとなりました。

受賞を受け、村井助教は「栄誉ある賞をいただいたことを大変光栄に思います。私自身、研究者としての社会経験はまだ年月が浅いため、自身の研究が評価されたことを嬉しく思うとともに、今後の研究活動に向けた励みになります。今回受賞の対象となった『BRFを考慮したオルソ画像生成手法』と題した論文は、これまであまり有効利用されていなかったUAV写真測量の特徴の一つである多方向観測データを用いることで、オルソ画像をすべての地点で、撮影時の太陽とカメラの位置関係を均一にするものです。これにより、例えば順光環境で撮影した影の影響の少ないオルソ画像を生成できます。実社会での写真測量技術の役に立つことができれば大変嬉しい限りです。また、日頃から研究活動を支えてくださっている高木教授と観測フィールドの管理に協力してくださっている地域の方々、森林ボランティアの方々に深く感謝を申し上げます。今回の受賞を励みに、今後も精進して取り組みたいと思います」と受賞の喜びと感謝を語りました。

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