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- Hou Tengxuanさんが国際色覚学会でPoster Awardを受賞
7月5日~9日にスロベニア・リュブリャナで開催された第27回国際色覚学会「International Colour Vision Society (ICVS) meeting 2024」において、博士後期課程 基盤工学コース3年のHou Tengxuan(侯 腾璇)さん(指導教員:視覚・感性統合重点研究室 /篠森 敬三教授)がPoster Awardを受賞しました。
ICVSは色覚分野に精通した研究者により構成された国際的な組織です。今回行われた学会は2年に1度開催される、色覚分野において世界で最も権威あるものとされています。
今回、学生主著者発表44件の中から3位を受賞しました。
Hou Tengxuanさんが発表したテーマは「Decline of color constancy from systematic color shifts of chromatic background surfaces(有彩色背景面の系統的な色の変化による色恒常性の低下)」です。
人間は、黄色や青色の照明下でもリンゴを赤色で知覚するなど、照明光の色が変わり見た目の色が大きく変化しても、もともとの(白色太陽光の下での)物体の色と変わらず知覚することができます。これを色恒常性と呼び、照明色を推定するプロセスと、錐体や神経の自動的な順応プロセスの両方により生じます。
実験では、最も外側に灰色背景、その内側に重なり合う色楕円の色背景、色背景中央の方形色刺激を1セットとする視覚刺激を、左眼には白色昼光、右眼刺激には色光で照明する形で画面呈示しました。被験者は色照明下の色刺激の色を変化させて、白色下の色刺激に「見え方は異なっていても、もとは同じ紙から切り出されたかのように」合わせます。
今回の研究の特徴として、色背景の色を系統的に以下のとおり変化させました。
①
(左眼)白色の照明下・白色中心色群の背景の場合→白色を中心として色が各色相方向に均等に分布する色群の背景が見える。
(右眼)緑の照明下・赤色群の色背景の場合→色がキャンセルされ白色を中心とする色群の背景のように見え、外側の灰色背景のみ緑系灰色になる。
つまり、左右眼で色背景部分がほとんど同じに見えるため、色恒常性が非常に低下します。
(左図:左眼で見える景色 右図:右眼で見える景色)
②
(左眼)白色昼光下・緑色群の色背景の場合→緑色群の背景が見える。
(右眼)緑の照明下・白色中心色群の背景の場合→緑色群の背景が見える。
つまり、左右眼で色背景部分が同程度に緑みがかり、この場合も色恒常性が低下します。
(左図:左眼で見える景色 右図:右眼で見える景色)
これらの結果から「外側の灰色背景の色変化から照明色推定が可能にもかかわらず、色恒常性が低下したことは、刺激近傍の色背景による順応プロセスの優位性を示す」ということが分かりました。
ところが、上述の実験において、灰色背景部分を拡大し遠近法描画により擬似的立体感を持たせると、色背景部分は全く同じであるにもかかわらず、色恒常性が復活しました。
(①に擬似的立体感を持たせたもの) (②に擬似的立体感を持たせたもの)
今回の実験を通して、照明推定のためには単なる手がかりの呈示では不足で、一定量の照明色情報呈示が必要なことを示し、本研究により、様々な刺激条件間で色恒常性効果が異なる原因の解明と、両プロセスの関係性から、色恒常性のメカニズムが明らかになることが期待されます。
(共著者の篠森教授(情報学群)(左)、Tanner DeLawyer講師(データ&イノベーション学群)(中)と、Hou Tengxuanさん)
Hou Tengxuanさんコメント
「私たちのポスターが多くの審査員から高く評価されたことを、心から光栄に思います。今回の結果は、篠森教授の優れた指導と貴重なアドバイスのおかげであり、心から感謝申し上げます。今後とも、篠森教授の英知に導かれながら、色覚の広大な未知の領域を探求し続けたいと期待に胸を膨らませています」
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