2022.7.29学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

西川 泰弘助教が南極の氷河の流動を観測するため第64次南極地域観測隊に参加

6月24日、政府の南極地域観測統合推進本部は、第64次観測隊の隊員64名を発表し、システム工学群の西川 泰弘助教が夏隊の研究観測(萌芽研究観測)の隊員として参加することが決定しました。

これは、宇宙科学研究所(ISAS)の田中 智教授が代表を務める「南極観測用ペネトレータの開発としらせ氷河および周辺域での集中観測(萌芽研究観測)」のメンバーとして参加するものです。このプロジェクトは、南極などの温度・環境・観測システムを設置するには障害や危険が数多く存在している地域において、自然現象を観測するシステムを効率的かつ経済的に整備するため、「観測できる場所での観測」ではなく、「観測したい場所での観測」を実現するための技術開発を目的としています。

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(本学で実施した事前実験の様子/下段:西川泰弘助教、上段:左から山本真行教授、本学大学院修士課程航空宇宙工学コース1年 山本耕大さん、宇宙科学研究所 田中智教授、株式会社SOOM CEO 阿久津岳生氏)

西川助教の専門は惑星地震学で、地震や火山を始め、直接目にする事のできない固体地球惑星や火星の内部で起こる諸現象を明らかにするため、インフラサウンド(※1)観測実験や取得データの分析に取り組んでいます。火星の内部を調査している米航空宇宙局(NASA)の着陸探査機「インサイト(InSight)」のサイエンスチームにも参加しています。

西川助教が南極で携わる研究は、地震計などを搭載した「ペネトレータ」と呼ばれる先端の尖った観測器(直径10センチ、全長60センチ、重さ約10キロ)を設置し、地震活動や氷河の崩落などの動きを把握するための適切な実験場所を選定することです。この観測器には、他の研究機関の各種センサーと一緒に本学が開発したインフラサウンドセンサーも搭載され、南極地域での運用試験や氷河の観察を行う予定であり、上空から落下させて地表(氷)に差し込む方法で設置する計画です。本研究は、これまで人の到達が難しかった「白瀬氷河」にて、氷河の流動に伴って発生する地震動やインフラサウンドを的確にとらえることによって、氷河の状態や運動を精密に解明することが期待されています。また、南極での観測システムが整えば、崩落した氷河の規模などから地球温暖化の現状を把握することにもつながります。

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西川助教は「大変貴重な機会をいただき光栄です。田中先生からプロジェクト参加のお話をいただいた時は即答していました。高知工科大学に着任してまだ一年しか経っていませんが、自分が好きなテーマで研究に没頭できる自由な環境と、インフラサウンド研究の第一人者である山本 真行教授のもとで研究に取り組むことができ感謝しています。南極での観測は天候に左右されることが多く、活動できる日数が限られています。研究初年度の重責を担っていますので、次の方にバトンを渡せるよう、出発までの5カ月間でドローンの操縦訓練、搭載用センサーの開発、ペネトレータの使用確認など完璧な準備をしていきます。また、南極と火星は環境が似ているので、今回の経験をいかしていつか火星や他の星での観測にも応用したいです」と意気込みを語りました。

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(写真提供:国立極地研究所/1枚目:昭和基地、2枚目:南極の氷河)

西川助教が所属する夏隊は、11月11日に南極観測船「しらせ」で日本を出発し、昭和基地に向かいます。南極での行動日数は99日で、来年3月22日に日本に帰国する予定です。

7月10日に本学香美キャンパスのグラウンドで実施したペネトレータの事前実験動画はこちらから

西川助教、山本教授の最新の研究成果「世界で初めて音(インフラサウンド)の観測から人工天体帰還カプセルの軌道を決定することに成功」はこちらから

※1 インフラサウンド
インフラサウンドとは周波数 20 [Hz]以下の音である。人間の可聴域は 20 [Hz]から 20 [kHz]程度であるため、インフラサウンドは人間には聞こえない可聴域未満の音である。インフラサウンドは、特性周波数が低いため長距離伝搬できる特徴がある。インフラサウンドは、火山噴火、地震、津波、落雷、土砂崩れ、大規模爆発などの災害をもたらすような事象によって発生することが知られており、これらをリモートセンシングすることで、災害の早期探知や規模解析を行うなど、減災に活用できると考えられる。

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