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西川 泰弘助教、蓮見 佑太さんがNASA探査機「オシリス・レックス」地球帰還時の衝撃波観測に成功

アメリカ航空宇宙局( NASA )の探査機オシリス・レックス(OSIRIS-REx)のカプセルが9月24日、米国西部ユタ州の砂漠に帰還しました。システム工学群宇宙地球探査システム研究室の西川 泰弘助教、大学院修士課程航空宇宙工学コース1年の蓮見 佑太さん(群馬県立桐生高等学校出身)は、カプセルが地球に帰還した時の衝撃波が生んだインフラサウンドの観測に成功しました。

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(写真1枚目:左から蓮見さん、西川助教)

宇宙地球探査システム研究室が地球帰還カプセルの観測を行うのは、NASA「スターダスト」(2006年1月・米国)での上空からの光学観測(カメラによる観測)以来、通算5回目で、うちインフラサウンドの観測としては、JAXA「はやぶさ」(2010年6月・豪州)と「はやぶさ2」(2020年12月・豪州)に次いで3回目となりました。

インフラサウンドとは、人間には聞こえない周波数(20 [Hz]以下)の音のことで、周波数が低いため地球大気中を長距離伝搬できるという特徴があります。また、火山噴火、地震、津波、落雷、土砂崩れ、大規模爆発などの災害をもたらすような事象によって発生することが知られており、これらをリモートセンシング(遠隔計測)することで、災害の早期探知や規模(エネルギー)解析を行うなど、減災にも活用できると考えられています。

今回の観測は、宇宙地球探査システム研究室が米国サンディア国立研究所の観測計画への助言を要請されたことを契機に、米国・豪州の研究者との間でオンライン会合を重ね、「はやぶさ2」帰還時と同じインフラサウンドセンサで計測することで両計画の比較観測を行うという国際的な貢献を提案し、2名の現場参画につながりました。

小惑星ベンヌの試料を収めた直径約80cm、重さ約46㎏のカプセルは24日地球に帰還、日中の大気圏突入となりました。「はやぶさ」「はやぶさ2」のカプセルは夜中に帰還したため、流れ星のような光条により光学観測が可能でしたが、今回は日中のため、光学観測によりカプセルの軌道を決定(通り道の計算)することは困難と予想されていました。その点、インフラサウンド観測による軌道の決定は、周囲の明るさの影響を受けることなく、「はやぶさ2」帰還時と同じ精度で軌道を決定することができます。

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(インフラサウンドセンサ(SAYA製INF04)と高知工科大学の学生が開発・製作した小型収録装置)

観測は、カプセルの通り道である米国ネバタ州ユーレカで実施。米国サンディア国立研究所チームが用意した70台のセンサに、日本から持参した7台を合わせた計77台のインフラサウンドセンサ等を使用。宇宙地球探査システム研究室が開発に関与した、持ち運び可能な小型軽量のインフラサウンドセンサ(SAYA製INF04)5台は「はやぶさ2」帰還時の観測実績を有し、過去データとの比較計測のために重要な役割を担いました。その他にも、加速度計や絶対圧力計も駆使し、大気圏突入後のカプセルが上空を超音速で通過する際に生成される衝撃波を、国際協力により多地点で観測することに成功しました。

今後、衝撃波を観測したインフラサウンドのデータ分析を進め、地球の大気中を通過する流星体の音の伝わり方などの飛行を記述するモデルの改善と検証を行います。また、流星体のサイズ・速度とインフラサウンドの特徴との関係を精緻化すれば、流星体の質量決定精度の向上や、上空大気の力学に関するより多くの情報の提供につながります。

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西川助教は「観測が無事に成功して良かったです。共同観測した海外チームとは、得意分野が違っていたので刺激を受けました。例えば、気球を使ったり、スマートフォンも飛ばしてリアルタイムで観測データを確認したりなど。インフラサウンドの観測では負けてないのですが、運用方法はとても参考になりました」と。また、蓮見さんは「修士論文で取り組んでいる、流れ星の位置・場所・爆発した時のエネルギーの推定研究に関連して、今回の観測に参加させていただきました。貴重な機会をいただき感謝しています。海外の研究者と英語でコミュニケーションをとるのに苦労したので、英語の勉強にも力を入れようと思います。実は、今回の観測に参加することが決まったのは、2週間前。パスポートの取得や集中講義などで満足に準備できず、段取りの大切さを痛感しました。初日のホテルにチェックインするのに5時間かかったりとトラブルもありましたが、これも良い思い出になりそうです。これからデータの解析を頑張ります」と語りました。

「はやぶさ2」の地球帰還時の衝撃波を観測したインフラサウンドのデータ分析結果はこちらから

山本 真行教授の最先端研究「民間開発ロケットが『インフラサウンド』の可能性を拓く」はこちらから

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