2022.12.27地域・一般 / 地域貢献 / 学群・大学院 / 研究 / 研究者・企業

「先端工学による地域産業への貢献を目指して」をテーマにIoP推進センターが研究成果報告会を開催しました

12月17日、永国寺キャンパスにおいて、「高知工科大学IoP推進センター研究成果報告会~先端工学による地域産業への貢献を目指して~」を開催し、農業へのAI導入やIoT化に関心のある方々63名に参加いただきました。

高知県では、農業先進国オランダの技術などをもとにした「次世代型施設園芸システム」に、AI(Artificial Intelligence:人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)など最先端の技術を融合させた新たな農業(ネクスト次世代型施設園芸農業:IoPプロジェクト(Internet of Plants=植物のインターネット))の研究開発に取り組んでいます。
この産学官連携プロジェクトに高知工科大学も2018年度から参画しており、本学が有する専門性に基づく地域貢献に取り組むとともに、農業(実業)と工学(学術)の連携融合による新たな価値創造を目指した研究開発を進めてきました。

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報告会では8つのテーマで研究成果を報告しました。   

情報の分野からは、「農作物の生育予測における深層学習の応用」をテーマに、吉田 真一教授(情報学群)が発表しました。
吉田教授は、農作物の生育予測・出荷予測、画像からのAIによる果実の生育把握、画像データからの機械学習・深層学習に取り組んでいることを紹介したうえで、深層学習モデルを構築する際の学習データ作成にかかる人手コストの問題について解説しました。画像位置から果実の位置検出を行う場合、数百・数千の学習データを用意する必要があり、そのデータを作成するのには一枚あたり30分程度の作業コストが発生するため、少データ・少ラベルの学習が実用上重要であることを説明しました。そこで、画像を生成する生成AIと、生成された画像が偽画像かどうか判定する判定AIの2つを戦わせて学習させる敵対的生成ネットワークを用いた学習データの自動作成に取り組み、生成画像を加えた場合では最大2.2ポイント認識精度が改善し、低コストでの学習データ拡張が成功したことを報告しました。

★吉田先生8B0A2066.jpg 吉田先生図1.png

機械の分野からは、「農作業の省力化を実現する作業支援ロボットの開発」をテーマに、王 碩玉教授(システム工学群)が発表しました。
冒頭、農業従事者数の減少と高齢化による農業の担い手不足について問題提起したうえで、ニラそぐりロボットと花卉定植ロボットの開発への取り組みを紹介しました。高知県が全国一の生産量を誇るニラの出荷作業は、刈り取り、そぐり、軽量、梱包の順番に行われており、不要な葉や異物をとりのぞく「そぐり」という作業に最も人手を要しています。そこで王教授は、作業コスト削減を目的として、いつでもどこでも使える風圧を利用した「そぐり」を行える作業支援ロボットを開発したことを解説しました。今回開発したニラそぐりロボットは、ベルトコンベヤー、エアノズル、カメラなどから成り、ニラをローラーで押さえながらエアノズルをスライドさせて風圧洗浄して不要な葉などを取り除き、画像認識技術も使って、異物が残ったニラを選別できることを報告しました。

★王先生8B0A2134.jpg 王先生_にらそぐり図1.jpg

参加者からは「工学側からのアプローチを興味深く聴講しました。特に、農業の中ではでてきにくい情報の分野においてクロスオーバーの技術で課題解決に取り組んでおられるのが面白かったです」「AIや通信など工科大の強みが活かされていると思いました」「高知工科大学への入学を機に兵庫県から引っ越してきました。地域の方との交流を通して農業のアルバイトをすることになり、高知の自然の中で植物にふれあうことが好きになりました。将来は、大学で学んだことを活かせる農業関連の仕事に就きたいと思っています」といった感想が寄せられました。

★ポスターセッション8B0A2202.jpg ★パネル展示8B0A2045 - コピー.JPG

会場には、それぞれの研究成果を紹介するポスターが展示され、参加者は研究課題に関する意見交換や、研究成果の実現に向けた今後の見通しなど、様々な意見交換を行っていました。

本学は引き続き農業分野でのイノベーションや地域活性化に貢献し、産学官連携による研究開発や技術移転を推進してまいります。

報告内容

森林バイオマス資源を活用した脱化石燃料型の施設園芸農業モデル 
 環境理工学群/地域連携機構  古沢 浩教授

データの有効な利活用のための安全・安心な情報通信ネットワーク
 情報学群 福本 昌弘教授

センサーに負荷をかけずにデータの安全を保障する情報セキュリティ認証
 情報学群 清水 明宏教授/IoP推進センター長

農作物の成長量を適切に把握するためのハウス内の光環境計測
 システム工学群 八田 章光教授田上 周路准教授

農作物の生育予測における深層学習の応用
 情報学群 吉田 真一教授

画像解析による果実の自動検出と収量予測への展開
 情報学群 栗原 徹教授

収穫ロボット開発のための画像認識と駆動制御
 システム工学群 岡 宏一教授

農作業の省力化を実現する作業支援ロボットの開発
 システム工学群 王 碩玉教授

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