アドバンストロボティクス研究センター

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センター概要

目的(背景)

成長分野を支えるロボティクス・メカトロニクス分野のキー技術として、いくつかの世界に誇れる基盤技術を開発することが本研究センターの第一の目的です。それと同時に、その基盤技術を核として、成長分野の研究者・技術者と連携し、当該分野の発展、および少子・超高齢化社会に大きく貢献できるインパクトのあるロボットシステムを生み出すことを目指します。

研究内容

現在、基盤技術として注力している技術は、安全制御技術、距離型ファジィ推論法を用いた意思推定技術、ウエアラブルな力・運動センサなどのセンサ技術、バランスの評価と疾患の診断技術、エネルギー回生型アクチュエータ、オムニホイールなどがあります。基盤技術を応用して、これまでに医療・健康・建築・農業・スポーツなどの成長分野に注力してきましたが、今後は、それに加えて、エネルギー、社会インフラなどとの接点も検討していきます。

研究成果

基盤技術としての成果


1. 安全制御技術

福祉ロボット実用化の難関である安全性確保に対して、制御工学の立場から安全制御法を世に先駆けて発表して以来、IEEE主催の関連国際学会にて2回受賞し、世界的に注目されてきました。

2. 距離型ファジィ推論法による知的制御技術 

距離型ファジィ推論法に基づいて、ロボット利用者の脳の中で考えた移動方向や作業意図の同定法、および、安全型支援動作計画法を開発しました。

3. ウエアラブルな力・運動センサなどのセンサ技術

世に先駆けてウエアラブル床反力センサの開発に成功し、その一部は商品化を行い医療関係の研究者に使用されています。また、非侵襲的な椎間板負荷推定システムについては、手法の妥当性が確認できました。

4. バランスの評価と疾患の診断技術

立位バランスの計測および評価について、フォースプレートからの姿勢と関節モーメントの推定法を考案し、特許を出願しました。これに関連して、バランス評価法を考案し、医療機関と連携して、頚髄症患者の判別ができることが示されました。

5.オムニホイール技術

基礎技術は完成しており、商品化したキーパーツが多くの研究機関で使用されています。それと同時に、当センターの医療・建築分野への応用の成果でもある全方向移動のキー技術にもなっています。

6.エネルギー回生型アクチュエータ

新しい概念の基礎技術として提案することができました。萌芽的な研究であるので、現在は、上肢リハビリ装置、短下肢装具、電動義手、手術ロボットなどへの応用を模索しています。また、油圧系と電気系の相似則を応用し、新しい概念の省エネルギー油圧システムを提案しました。

成長分野への応用としての成果


1. 福祉・介護・リハビリロボットシステムの開発

提案した全方向歩行訓練法は、近年、医療・福祉分野では認知度が高まりさまざまな実現法が開発されました。開発した全方向型歩行訓練ロボットは、学会でも高い評価を得ており(国内・国際学会の三回受賞)、実用化を果たしました。

方向意図によりロボット走行する目標経路・軌道をリアルタイムで計画できる、操作性の高い歩行支援ロボットを実現しました。

単体多機能型生活支援ロボットを開発し、高齢者の意図(移動・方向・目的地、移乗、さまざまな作業、立ち座りなど)の推定、安全型支援動作計画を実現しました。

介護支援ロボットを開発し、寝たきり障害者の生理的欲求に基づく意図推定をしました。

ウエアラブルセンサによる運動および姿勢解析システムとして商品化され、多くの分野から引き合いがあり、医療を中心としてユーザが広がりつつあります。

安静立位に対して、フォースプレート計測から重心や関節トルクの変動を推定し、医療機関と連携して、体性感覚・前庭感覚・中枢神経系の疾患の検出や、関節戦略による代償などを把握して、障害の質や程度を判定するシステムを構築しました。

2. 省力・自動化ロボットシステムの開発

建設現場における深刻な人手不足を解消するために、建設資材自動搬送ロボットを開発し、世界で初めて完全自動化を実現しました。また、「高知県Next次世代型施設園芸農業推進事業」において、高知県の特産品である、ニラと切り花における省力・自動化を実現することを目指して、ニラの出荷支援ロボットと切り花の定植作業支援ロボットを開発しました。

研究課題・展望


1. インパクトのある基盤技術の創出

人と直接触れ合う福祉ロボットでは、安全・安心が生命線であり、この解となる制御工学がまだ存在していません。もし、福祉ロボット安全制御工学という新しい学問体系を確立できれば、福祉ロボットは実社会の構成要素として参加することが可能となり、介護人材不足の問題が本質的に緩和されます。福祉ロボットのような非線形対象にも適用できる安全制御技術を生み出していきます。

ウエアラブル化に成功した結果、応用分野が広がり、多くの課題が見えてきました。これまでに開発した技術のブラッシュアップにとどまらず、新しい機能を有するシステムを世に先駆けて開発していきます。対象とする分野も、これまでの医療中心から、健康・スポーツへと展開し、それらの分野の将来ニーズを先取りした新しいセンサシステムを開発していきます。

慣性センサの計測から重心位置、歩様、関節トルクを推定し、歩行の安定性や歩行効率を評価します。安定性の評価によって衰えやリハビリ効果を明らかにし、歩行効率から関節にかかる負担がわかるので、変形膝関節症や変形股関節症の予防につなげていきます。

2. 福祉・介護・リハビリロボットシステムの新しい開発と展開

全方向歩行訓練法の更なる発展の次世代として、高度な制御技術と計測技術を構築することで、患者の歩行機能早期回復および理学療法士の負担軽減を実現する、画期的な歩行訓練ロボットシステムを開発していきます。

介護ロボットの生理的要望推論の理論体系を構築して、要介護者の生理的要望を満たす、知能型介護ロボットシステムを完成していきます。

ユーザを高齢者やアスリートに限定せず、健常成人へ拡大し積極的に自分自身の健康を維持、向上する効果的なヘルスケアシステムの実現を目指す。また、電力不足を解消するエネルギー回生と脳活動情報を用いたアクティブ歩行補助装具の開発を目指します。

動的な外部刺激に対する応答をモデル化し、適切な応答が得られるようなリハビリ装置を開発します。理学療法士が手技で行っているリハビリプロセスを機械化することで、省力化と質の均一化を図るとともに、評価も同時に行って改善度を可視化します。

3. 省力・自動化ロボットシステムの新しい開発と展開

建設資材自動搬送ロボットの性能をより一層向上し、建築現場に普及させていきます。

農業の高齢化と後継者不足は非常に深刻な状況に置かれており、特に高知県にとって、農業は、基幹的な産業として重要な位置を占めているので、いかに農家を守るかが、緊急課題であります。より効率よく取り組み、次世代に残る農業ロボットの基盤技術を磨き上げていきます。

4. 技術の融合の推進

ウエアラブルセンサ技術、オムニホイール技術、知的制御技術を融合し、より付加価値の高い歩行訓練機の制御技術を創出します。そのなかで、脳科学や情報科学との連携も検討していきます。

5. 歩行・姿勢の諸現象の解明

歩行や姿勢については、これまで複数のメンバーが異なった観点から研究を進めてきました。高齢化社会において、歩行は、非常に重要な機能として位置付けられていますが、未解明の問題が多く、その解明を進め、新しい診断技術を生み出します。

6. 医療・健康・スポーツ以外への応用展開

ロボティクス・メカトロニクスの基盤技術は普遍性があるので、他の成長分野においても、十分にキー技術として展開することが可能です。一例として、エネルギー回生型アクチュエータの電気系の部分を油圧システムへ展開した結果、油圧においては、全く新しい概念となる省エネルギー技術として提案することができました。自動車の安全運転、省エネルギー機械、航空宇宙、安全安心な社会インフラなどの分野においても、最適なパートナーを探すことで技術の融合を図り、新しい技術の創出を図っていきます。

メンバー

システム工学群 教授 王 碩玉
システム工学群 准教授 芝田 京子
システム工学群 准教授 園部 元康
総合研究所 助教(ポスドク) 楊 光
客員教授 井上 喜雄
客員教授 LIU Tao
客員教授 石田 健司
客員教授 CHAI Tianyou

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