• システム工学群
  • 大学院修士課程 建築・都市デザインコース
  • 1年
  • 国土情報処理工学研究室

川村 唯華さん×高木 方隆教授

空から、宇宙からデータを取得し解析するオールラウンドな測量・解析技術を磨き、防災関係の仕事で故郷を守りたい。

高木教授
なぜ私の研究室に入ろうと思ったの?

川村さん
一番の理由は、先生の講義が面白かったことです。説明の仕方が独特で。「昔の人はここでこうやっていたから、こういう技術が生まれて、それが進歩して今こういう形で測量技術がある」みたいな...。

高木教授
小学校で習った三角形の合同から始めて、タレスがピラミッドの高さを求めたのも、ハイテクな測量機器も原理は同じ。スマホでここからここまでの距離を出すのも、余弦定理を使っているんだよという話のことかな。

川村さん
そう! それが面白かったです。私は数学も好きだったので、なるほどと思いました。

高木教授
三重県尾鷲から高知に来た理由は?

川村さん
母が高知出身で、私も小さい頃から高知県には何度も来ていました。高知工科大学は、祖父母からも、いい大学だと聞いていたので、一人暮らしをして、新しい地でいろんな人と出会いたいと思って入学を決めました。

高木教授
では本題へ。卒業研究のことを話しましょう。葉面積指数について、簡単に説明してくれますか。

川村さん
はい、葉面積指数とは、単位土地面積あたりの葉の総面積を表す指標です。山林がどれくらい二酸化炭素を吸収するかの指針になります。また、樹木があまりに葉を生い茂らせると地面の草が育たなくなり、土砂崩れなどが起きやすくなります。それを精度よく求めることが今回の研究目的です。対象に選んだのは、ヌルデというウルシ科の落葉広葉樹です。

高木教授
手ごたえを感じたところは?

川村さん
写真測量で点群データを取得し、そこから葉っぱと枝の部分を分ける条件を自分なりに設定したことです。その設定値で、ヌルデの単木では相対的な葉面積率を求めることができました。今後は木の本数を増やしたり、種類を変えたりした場合にどうなるか、さらに研究する必要があると思います。

高木教授
研究職をめざすのなら、幅を広げていくことも大事だと思います。卒論ではドローンを使った計測をやったので、大学院では人工衛星の画像計測にチャレンジするとか...。地上での計測から宇宙からの計測までつなげられたらいいですね。

川村さん
はい、ぜひ挑戦してみたいです。

高木教授
川村さんは自分の性格で研究に向いている点はどこだと思いますか。

川村さん
真面目というか堅物な面があります。プログラムでパソコンと向き合い集中する作業が必要なんですが、ほんの数行のコードを変えるだけで効率が良くなったりする。粘り強く考えることが好きなので、そこは向いているかなと思います。でも一点に集中しすぎて、ずっとそこで突き詰めてしまうところがあるので、もう少し視野を広げたいです。

高木教授
研究室の雰囲気はどうですか?

川村さん
どの研究室よりも交流があるというか、高木先生が研究以外にも新年会だとか、いろいろイベントを開いてくださるおかげで、学生同士、絆を深めることができるんです。今後もそういう活動を続けていただきたいです。

高木教授
将来の目標は?

川村さん
防災関係の仕事に就きたいと思ってい ます。高知県もそうですが、私の故郷、三重県でも南海トラフについては「備えろ」とずっと言われてきました。自分の故郷を守りたいという思いがあります。自分のやってきた測量の知識を生かして力になれる仕事に就きたいです。

高木教授
防災は私も長くやってきたけど、牧野植物園の稲垣 典年先生と共同研究をする 中で、防災と植生の関係を考えるようになりました。先生から「地すべりとか斜面の崩 壊とかって、災害だって言うけど、植物にとっては必要な現象で、新しい土地が生まれ、そこでまた新しい植物が生えていく」と聞いて、自然と敵対するんじゃなく共存する方法を考えなきゃなと。西日本豪雨の時も、放置林や人工林は崩れやすかったけれど、自然に近い森はあまり崩れておらず、 モノカルチャーではなく多様な植生が山を守ってくれるんだなと思いました。そういうこともあって「里山工学」を始めたんです。

川村さん
そしてご自身で自給自足をめざして里山に移住してしまわれたんですね。

高木教授
川村さんにも、できるところから「Sustainable life works」に挑戦してほしいですね。これからも素直に取り組んで、どんどん視野を広げていってください。

川村さん
ありがとうございます。研究はもちろん、研究以外にも自分の器を大きくできるよう様々なものにチャレンジしていきたいです。これからもよろしくお願いします。

「里山工学」とは...

里山工学とは、地域の自然・歴史環境を最大限に生かした持続可能な社会を実現するための学問です。先端センシング技術やGISを活用して地域環境の特徴を把握し、 気候変動と生態系変化を予測しながら、地域に適した一次産業の再構築と心豊かな社会の実現をめざします。

川村さんの「心に残る言葉」

高木先生が、「なんのために生まれて、何をして生きるの か、こたえられないなんて、そんなのは嫌だ」というアン パンマンの歌を紹介した後、「私はいまだに、このことを考えて生きている」と言われたのが印象的でした。それ を考えていければ、私ももっと心豊かになれるかな。

掲載日:2025年5月/取材日:2025年3月