• システム工学群
  • システム工学群 建築・都市デザイン専攻
  • 4年
  • 環境建築デザイン研究室

長谷川 紗良 さん×渡辺 菊眞 准教授

地域の生活や歴史を踏まえ、魅力ある風景と快適性を取り入れた建築を提案する。

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長谷川さんはどうして高知工科大学のシステム工学群を選んだんですか?

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建築か機械か、高校の時に進路に迷っており、1年次に建築と機械系、両方学べるところに魅力を感じたからです。有名建築家の 建造物の模型を作り、そこから自分なりに新しいものを作るという授業が印象的で、その体験を通じて「建築のデザインがしたい!」と2年次から建築を専攻しました。

渡辺准教授
私が研究テーマのひとつにしている 「パッシブソーラーシステム」についても興味を もってくれましたね。

長谷川さん
南面に大開口を設けて太陽光を取り入れるとともに、住宅の外皮性能の基準をクリアしたうえで太陽熱を蓄えたり、通風によって涼しさを担保したり、夏も冬もなるべく自然を活用するだけで快適な環境を作って、足りない部分は機械でまかなうという技術を知り、今後の建築設計において重要だと思い、感心をもちました。

渡辺准教授
3年次からの研究室では、瀬戸内海にある与島(香川県坂出市)での仮想地域未来計画に取り組みました。当地を調査し、島の現状を認識したうえで地域の未来を見据え、自分の住みたい家を計画するという研究課題で、研究室としては5回目の試み。私自身、10回以上当地を訪れていますが、長谷川さんの作品を見て「見落としていた場所」を見つけてきてくれたという驚きがありました。

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長谷川さん ★長谷川さん_X0A6648.jpg
1回目の訪問で島全体を把握し、2回目で目星をつけた場所の現地調査を行いました。海辺の小さな造船所で、建物の隙間から レールが海に沈んでいっているのが見えて、それが気になって。

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与島は石切が有名で、その運搬などにも船は欠かせないもの。そうした島の生活を担ってきた風景とともに住むということですが、 造船所に居住するわけにもいかないので、 「レールが海に沈んでいく」という印象的な風景を少し離れたポジションからどう再現するのか、という難しい課題に挑戦しましたね。

長谷川さん
筒状の構造物を作り、「レールの風景」を住む人だけではなく、遠くから地域の人も眺められるように工夫しました。仲間6人との共同作業で、大変でしたが愛着も大きいです。

渡辺准教授
島の生活に寄り添いつつ、アートの空間を演出し、かつ快適な住まいとしても機能している点を高く評価しました。9月には京都の 設計事務所でのインターンも始まりますね。

長谷川さん
先生にご紹介いただき、3年次の冬にも2週間ほど伺った事務所に再度お世話になります。実際の現場では、建物の造りはある程度標準化されるという認識でいましたが、前回のインターンシップの際にいい意味でその先入観が覆されて。建築が立つ土地の場所性や、機能と空間の連関の深さなど、すごくこだわりをもって仕事されている現場に触れ、こういったところで私も働きたいと思うようになりました。

渡辺准教授
その事務所の代表者とは以前からの知り合いで、長谷川さんのことをお話するとともに、会社の仕事についての考え方などをお聞きしました。単に実務をこなすのではなく、長谷川さんが建築家としての思考を深め成長していける環境だと感じたので推薦しました。就職内定にもつながるといいですね。

長谷川さん
ありがとうございます。あとは卒業研究ですが、もともと興味のあったパッシブソーラーシステムをはじめ、場所柄やその土地の文化を大切にした建物の提案に取り組めたらと考えています。

環境建築デザイン研究室とは...

建築内外にわたる良好な温熱環境、その地域に固有の魅力ある風景を含む文化的環境、そして心の奥底で響きあいやすらう内的環境、その三つの環境が調和して成り立つ心豊かな場所を建築デザインによって構築することをめざします。

長谷川さんは頑張った!

研究室では、修士課程の先輩の研究に関する現地調査にも同行。長谷川さんは山あいの集落の調査に参加し、住宅の型、集落の骨格を掴むための街路・水路などの把握に努めました。山道を含め1日約20kmを歩くハードな調査でしたが、その体験を通じて「生活に即した、その場所に適した空間づくり」の視点が得られたといいます。

掲載日:2024年2月/取材日:2022年7月